研究課題/領域番号 |
24740307
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴木 絢子 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (20547252)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 衝突実験 / 軽ガス銃 |
研究実績の概要 |
平成26年度までに自らが開発した縦型ガス銃の試射を行った。弾丸には高密度ポリエチレンを用い,直径8mm,長さ7mmの円柱形とした。まず弾丸が設計通りに発射されるかどうかを確かめた。その後,加速用の圧縮ガスの充填圧力を変えたときの弾丸の速度変化を調べた。弾丸の速度計測には,TMR社製のハイスピードカメラE2を用いた。弾丸の飛翔の様子を2000fpsで撮像し,実験後に各時刻の画像における弾丸の位置を計測して,速度を計算した。 弾丸はきちんと発射された。また圧縮ガスの充填圧力が0.1~1MPaの範囲では,充填圧力を高めると弾丸の速度は速くなり,増加率は理論曲線と類似していた。しかし速度の絶対値は,各充填圧力で理論値の6~7割程度であった。理論値の推定では,銃身内壁と弾丸の摩擦は考慮していない。しかし,弾丸を円柱形としたために,銃身内壁との接触面積が球等の場合より大きく,摩擦の寄与が大きいと考えられる。 さらに,円柱弾丸が銃身直下に設置してあるサボストッパーの孔に突入しないケースが多かった。実験後に回収した円柱弾丸の損傷具合や,ハイスピードカメラの画像の解析などから,円柱弾丸が銃身から発射後に回転している可能性が高いことがわかった。複数の要因が考えられるが,現在のところ,円柱弾丸のアスペクト比(直径/長さ)が大きいことが一番効いているのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を進める中で,加速用の圧縮ガスを逃がすチェンバーを持った縦型ガス銃の開発が必要となり,平成27年度はその開発した縦型ガス銃の試射を行った。縦型ガス銃は完成し,きちんと弾丸を発射することができた。しかし,弾丸形状などをさらに工夫する必要があることが明らかとなった。加えて,平成26年1月6日~平成27年3月31日の期間,産休・育休の取得に伴い研究を一時中断していたため,やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
産休・育休取得に伴い研究を一時中断していたため,研究期間の2年延長を申請し,承認された。下記のように研究計画を見直す。 円柱弾丸がサボストッパーに突入しない問題をまず解決する。円柱のアスペクト比を変えた弾丸を自ら製作し,試射を行って最適な形状を割り出す。アスペクト比の変更で問題が解決しない場合は,円柱の製作を業者に依頼するなどして加工精度を上げてみる。さらに問題が解決しない場合は,サボストッパーの改良も検討する。 試射と平行して,レーザーとフォトダイオードを用いた弾丸の速度計測システムの開発,雪標的の温度を低温に保つことのできる標的コンテナの開発を行う。雪を用いた実験は,実験室全体がマイナス10度などになる環境で行う必要がある。しかし,マイナス10度は雪(氷)の融点より低い温度環境下ではあるが,焼結が起こって雪粒子同士が結合してしまい,雪標的は強度を持つ。今回行いたいのは,標的の強度が十分に小さく,標的天体の重力がクレーター形成を制御する「重力支配域」や,強度支配域と重力支配域の境界領域であるため,標的コンテナの開発が必要不可欠である。 準備が整った後,雪標的に対するクレーター形成実験を行う。研究協力者である神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻の荒川政彦教授が所有している低温実験室を使用する予定である。衝突速度を変えて実験を行い,実験の様子を高速ビデオカメラで観察し,エジェクタの到達距離や堆積地形,堆積様式を調べる。融解が起こるか,融解が起こった場合どのように分布するかなども調べる。結果は随時研究協力者と議論する。学会や研究会でも発表して多くの研究者から意見をもらい,現象の理解を深める助けにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
産休・育休取得に伴う研究の一時中断があり,研究期間を2年延長し承認されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
円柱弾丸が回転してしまう問題を解決するために,自分で製作した弾丸では問題が解決しない場合,弾丸製作やサボストッパーの改良を業者に依頼する可能性がある。レーザーとフォトダイオードを用いた弾丸の速度計測システムの開発,雪標的の温度を低温に保つことのできる標的コンテナの開発に用いる。実験結果の理解を深めるために,研究協力者と議論したり,学会や研究会でも発表するための旅費として使用する。
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