研究実績の概要 |
前年度までに得られた実験結果を解析した。雪標的上にできたクレーターは,半楕円球状の窪み(ピットと呼ぶ)と,それを取り巻く不定形の窪み(スポール領域と呼ぶ)からできていた。これは,岩石への弾丸衝突などで観察される,典型的な強度支配域クレーターと似た形状である。ピットの直径と深さは,標的強度が増大するにつれて減少した。一方,スポール領域を含むクレーター全体の直径は,標的強度が小さいうちは強度と共に増大し,ピークを迎えたのちに減少に転じた。今回の実験の最長焼結時間20時間の場合にはスポール領域は消失し,ピットのみのクレーターが形成された。焼結時間15分の標的にできたクレーターには,クレーター周囲の一部に土手のようなものが付随しており,重力支配域のクレーターで観察されるクレーターリムと似た特徴を示した。Holsapple, 1993で提案された統合スケーリング則の第1項(重力支配項)と第2項(強度支配項)の比は,0.1~1.7の範囲になった。強度支配域項の係数を~1と仮定すると,今回の実験条件は,強度支配域と重力支配域の境界領域にあたる。一方で,深さ-スポール直径比は0.5~1に近く,粉体上にできる衝突クレーターの値(~0.2)より大きく,弾丸標的密度比の高い強度支配域のクレーターに近いこともわかった。さらに,Arakawa and Yasui, 2011で観察された雪標的上のクレーターよりも大きいが,これは,Arakawa and Yasui, 2011よりも密度の大きい弾丸を用いているためであると考えられる。 解析結果は研究協力者と議論し,追加実験は行わずにまとめた方が良いと判断した。日本惑星科学会秋季講演会,衝突研究会で発表し,それぞれの参加者とも議論した。
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