研究課題/領域番号 |
24740310
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
古市 幹人 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (50415981)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 惑星形成・進化 / コア形成 / ストークス流れ / 線形ソルバー |
研究概要 |
本研究課題では、地球型惑星の中心核(コア)形成時におけるグローバルスケールでの金属層形成過程を調べている。具体的には地球形成時の基礎構成物質を、金属の分化の進んでいない原始惑星起因の物質と、惑星衝突により分化したシリケイト(マントル)と金属(コア)に富む層の3種類に分けて、固有の粘性・密度を与えたストークス流れのシミュレーションを行う。 本年度はまず①マグマオーシャンや多数のマグマポンドの形成を経験した後のコア形成モデルの再現を行った。これにより、古くはElsasser 1963等が提唱したコア・プロトコア間の反転シナリオの再現が3次元シミュレーションが行えた。 また、新しく提案する計算モデルとして②ジャイアントインパクト以前の中規模惑星衝突による原始惑星物質の消失の評価計算に挑戦した。隕石衝突の理論モデル計算により、衝突毎にシリケイトと金属の層が表層に付加される事で、惑星サイズが成長する効果を取り入れた。このような計算によって、衝突毎に形成される金属層が中央に落ち込み、同時に中央の物質が外に押し出される様子が再現できる。結果を解析したところ、現在の地球半径の0.8倍程度成長した初期地球の内部構造が必ずしも一様ではなく、コアを覆う分厚いマントルの層が形成される事を見出した。そしてこれらが、N体問題等で提案されている隕石パラメータの範疇においてロバストに形成されうることが分かった。これらに基づき、隕石衝突による衝撃による直接的な溶融分化プロセスを逃れる領域が、CMB上に形成されうる可能性(シナリオ)を提唱した。 さらに、現実的なレオロジーを用いたシミュレーション行うために③エネルギー方程式と状態変数に依存する粘性応力の導入のためのモデル開発を行い、コア形成時の物質的なものだけでなく温度場の不均質性をも評価できるシミュレーションコードを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の記載に基づくと、①マグマオーシャン直後を初期値にし②隕石衝突を伴い成長する計算に対しては、本年度初頭にシミュレーションの可視化に必要な環境等を整備したうえで、プロダクトランを行い、当初の計画目標を達成している。③の項目に対しては、計画に沿ってエネルギー方程式の新しいモジュールの実装を終えたが、数値計算手法として数値振動などの問題に直面しているため、それらの問題を解決するための部分的陰解法の導入などの手法研究が次年度の課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、シミュレーションのポストプロセスに必要な環境を適宜整えつつ、現在グリッドサイズが128x128x128を中心に行っているプロダクトランを、256x256x256-512x512x512に引き上げて計算を行う。モデル開発として、計算中の数値振動を抑えて長い時間ステップを可能にするような部分的陰解法や、同位体追跡を可能にするトレーサーの手法開発に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
近年発展の目覚ましいメニーコアに対応したシミュレーションに本課題研究を対応させるべく、本年度の後半に高精度なGPUを搭載したコーディング用のPCを購入予定していたが、10月頃に新しくXeon PhiというGPGPUに置き換わりえる新製品が発表されたため、その性能を検討するために購入を見送った。このような理由により差引額が存在しているが、それらは次年度においてGPUもしくはXeon PhiベースのコーディングPCを購入する費用に充てる。
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