研究課題/領域番号 |
24740310
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
古市 幹人 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 主任研究員 (50415981)
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キーワード | コア形成 / ストークス流れ / 大規模非線形問題 / クリロフ部分空間法 / 深部異常領域 / マントル対流 / 初期地球 / 地球内部ダイナミクス |
研究概要 |
本研究課題では、地球型惑星の中心核(コア)形成時におけるグローバルスケールでのダイナミクスを調べる。具体的には地球の構成要素を、シリケイトと金属が未分化な物質と分化が進みそれぞれに富んだ物質との計3種類に分け、ストークス流れのシミュレーションを行った。自由境界表面を扱った3次元シミュレーションである事、そして惑星衝突による物質の付加を考慮に入れた点が既存の研究にはない特徴である。中規模惑星衝突による惑星成長を計算したところ、ジャイアントインパクト直前の状態において惑星内部の構造が必ずしも一様とはならなかった。これは、隕石衝突による直接的な溶融・分化を逃れる層が地球深部にマントル対流の初期条件として存在しうる可能性を示している。さらに、シミュレーション結果との定量的な比較により、それらが深部マグマオーシャン仮説やバサルトのリサイクル仮説と共に、地震学・地球化学から提唱されている地球深部の成分異常領域の形成過程仮説となり得ることを見いだした。 上記の取り組みに加えて本年度は、コア形成と熱進化の関係を明らかにする事を目的として熱対流を解くためのシミュレーションコードの改良を行った。この問題の困難な点は、物質移動に伴う物質境界表面の振動が時間積分を数値的に硬くしてしまい、陽解法で解を得るためには非常に小さな時間幅が必要になる点である。そこで、物質移動を非線形要素とみなして定常解を求める事で、移流陰解法を実現し大きな時間幅による数値積分を可能にすることを試みた。いくつかの数値実験の結果、開発した手法はCPU時間を削減するのに効果的であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
惑星成長に伴う内部構造の変化については、実際に隕石衝突をモデル化したプロダクトランを行い、それから得られた知見を基に地球深部異常領域の形成過程に対する仮説を立てる事を達成している。現在、それらの結果と他の仮説との整合性も議論した論文が査読中である。一方で平成24年度では熱対流をうまく解くための手法がないという課題があったが、平成25年度はそれに対する回答として非線形ソルバーを用いた移流陰解法を開発し2次元での予備数値実験により、その有効性を見いだすことに成功している。このことから平成26年度において、熱対流計算が可能になる事が見込まれる。これらの手法開発の成果は学会発表を経て、ETHの共著者と共に論文執筆に取り掛かっている。一方で申請書に記載した同位体モデルの実装は、技術的な困難が多く課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は引き続き、出力される膨大なデータを処理するためのポストプロセス環境を整えつつ、平成25年度に開発した移流陰解法の3次元で実装しプロダクトランを行う。特に隕石衝突により地球内部に持ち込まれる熱異常領域の進化をシミュレーションする事で、マントル対流の開始にどのような影響があるのかを数値的に再現する。また同位体追跡を可能にするトレーサー技術の開発にも取り組む
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、シミュレーションコードの開発を近年発展の目覚ましいメニーコア環境に対応させるため、Xeon Phiを搭載したマシンの購入を検討していたが、調査により思ったよほど性能が得られないことが分かったため、購入を見送った経緯がある。また、海外発表などは積極的に行っているが、招待等により滞在費用が抑える事が出来た。その結果、旅費の使用が計画に沿った使用にはならなかった。 平成26年度に計画しているプロダクトランに際して、ポストプロセスの効率化のため高性能なGPUもしくはPhiの利用が必須となるため、その購入に費用を充てる。また、適宜海外出張旅費が必要となる。さらに、査読中・改訂中の論文がいくつかあるため、それらの出版費用による出費も見込まれる。
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