研究課題/領域番号 |
24740311
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
宮腰 剛広 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (60435807)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地磁気変動 / 地球ダイナモ / 数値シミュレーション |
研究概要 |
地球磁場は地球中心部の核を構成する液体金属の対流運動によりダイナモ過程を通じて発生している。この磁場は生命にとって有害な宇宙線や太陽風から地球の表層環境を保護する役割を持つ。この防御効果は磁場の強さに依存する。そのため磁場強度がどのように変動するのかを理解することは、表層環境および生命にとっても意味を持っている。 地球磁場の強度は常に一定ではなく変動を持つ。しかしながら、磁場強度変動の原因やなぜ変動が生じるのかについては現在も謎のままである。一つの有力な仮説として、磁場強度と気候変動との関連が指摘されている。気候変動により氷床消長が生じると、地球上で水の質量の移動が生じ、それは地球の慣性モーメントを変化させるため結果として地球の自転速度を変動させる。核内の液体金属は地球自転の影響を極めて強く受けるため、このような変動が生じれば核内の対流運動に影響を及ぼす可能性がある。結果として対流運動により生じる地球磁場にも影響が及ぶ可能性がある。 地球の核内は直接観察する事が不可能なためスーパーコンピュータによる数値シミュレーションが有力な研究手段の一つとなっている。地球ダイナモシミュレーション研究が始まって以来20年弱が経つが、これまでに自転速度変動を取り入れたシミュレーション研究は行われていない。本研究では、世界で初めてとなる自転速度変動を考慮した地球ダイナモシミュレーションによる磁場強度変動の研究を行っている。 本年度の研究の結果、自転速度変動により地球磁場強度の変動が実際に生じることが分かった。どの程度の変動が生じるかについてはエクマン数(自転の影響力の強さを表す無次元パラメータ)に依存する事が分かった。また、磁場強度以外にもいくつかの重要な物理量が自転速度変動に伴い変動する事、そしてそれらの変動が磁場強度変動と深く結びついている事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地球磁場強度変動の詳しいメカニズムを調べるため、スーパーコンピュータによる大規模数値シミュレーションを実施し、詳細な時系列データの出力を行い結果を解析した。また、さまざまな重要な物理量の変動を調べるためそれらの計算もデータ出力の際に同時に行うように機能を追加した。その結果、磁場強度以外に、予想していなかった物理量の変動が生じることが明らかになり、またそれらの変動が磁場強度変動と深く関わっていることが分かった。自転速度変動は運動方程式を通じてまず対流運動に影響を与えるが、具体的にどのような変動を対流に与えるのかを明らかにする事が出来た。さらに、この対流運動の変動がいくつかの重要な物理量の変動を生じさせつつ磁場強度の変動を生じさせる過程をほぼ明らかにする事が出来た。自転速度変動を考慮した地球ダイナモシミュレーションは世界で初のものでありインパクトを与える成果となると考えている。以上により研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
地球における氷床消長を伴う気候変動を引き起こすものとしてミランコビッチ・サイクルによる地表面への日射量の変動が考えられている。自転軸の変動や公転軌道要素の変化により日射量が変化するため、氷床の形成と融解のサイクルが引き起こされると考えるものである。実際に両者の間の相関が指摘されている。 現在、自転速度変動としては単一周期のものを考えている。周期は約2万年で、これはミランコビッチ・サイクルの一つとほぼ同じものである。しかしながらミランコビッチ・サイクルは複数の周期を持つ。複数の周期を考えた場合、周期の異なる自転速度変動が同時に生じるためさらに複雑な地球磁場変動が生じるものと考えられる。複数周期を考えることにより、さらに現実に近い地球磁場変動の詳細を調べていく予定である。 また、地球磁場変動にはこのような気候変動に伴う数万年スケールの変動のほかに、もっと短い数十年スケールの変動もある。こちらは変動幅が数%と小さいが、やはりその原因やメカニズムは分かっていない。このような短い周期は、核のスピンアップ時間よりもずっと短いため、異なる様式の変動が生じる可能性がある。すでに予備的な計算でこのような短い周期の場合の結果も得ているが、今後このような短周期の自転速度変動の場合についても詳しく調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に出た成果の論文出版費用として30~40万円、および国内外の学会で成果を発表するための旅費として30~40万円を使用する予定である。残り数万円~10万円程度は、主に消耗品(データ記憶用ハードディスクなど)に使用予定である。
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