平成26年度は、平成25年度に実施したケースに対して、Ekman数を約10倍にして地球ダイナモシミュレーションを行った所、元の場合と比べて自転速度変動の振幅を3倍にしても磁場の変動が生じない事が分かった。現在モデルで用いているEkman数は、スーパーコンピュータの能力の制約のため、現実よりもずっと大きな値で計算している。つまりこの結果は、実際のコアのEkman数の元では、もっとずっと弱い振幅の自転速度変動でも磁場変動が生じる事が示唆される。3倍では起こらないという所までは押さえられたが、何倍まで上げるとEkman数10倍でも磁場変動が生じるかまでは明らかに出来なかった。これが分かれば、各々のEkman数と、それに対する磁場変動に必要な自転速度の振幅の関係が分かるので、実際のコアのEkman数の場合にどうなるか、外挿による推定が可能になると期待される。これは今後の課題である。 また、地磁気変動が起こる場合について、コア内磁気エネルギーと磁場のダイポール成分の変動位相はほぼ同じだが、両者の強さがピークの時間と弱くなる(変動の谷の)時間とでダイポール成分と高次モード成分を比較したところ、両者がピークの時間では前者が後者に比べて相対的に強く、変動の谷では逆になる事が分かった。地磁気エクスカーション(地磁気が非常に弱くなるが、反転に至らずまたもとの強さに戻る)の際に、このような特徴が生じる事が分かっており、エクスカーションの特徴を捉えられている可能性がある。 研究期間全体を通じて最も特筆すべき成果は、特に自転速度変動周期が2万年(ミランコビッチ・サイクルの一つに非常に近い周期である)の場合について、磁場変動とそのメカニズムをほぼ明らかにする事が出来た。これは、これまで明らかになっていなかった気候変動と地球磁場変動の関係を解明するための有力な手掛かりになる可能性があるという点から意義あるものであると考えている。
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