最終年度は、レシーバ関数法を用いてDONET下の構造推定を行った。解析では、約2年半分の遠地および深発地震の記録を用い、付加体底部・海洋性地殻に起因するPs変換波の抽出に成功した。その変換波を解析した結果、付加体内部の平均的なVp/Vsは1.9-2.3と見積もられ、また、同時に付加体の底までの深さを推定することにも成功した。 通常、海底地震計記録は陸域観測点に比べてノイズが大きい。したがって、これまでの研究では、レシーバ関数解析はかなり難しいと考えられてきた。しかし、本研究では、海底地震計記録の短周期成分を使用すれば、レシーバ関数解析が可能であることを明らかにした。 また、海底では、観測点に上から海面反射波が入射するため、レシーバ関数解析を行うときに都合が悪い。しかし、本研究では、観測点を上に進む波と下に進む波に分け、上に進む波だけを使用して、レシーバ関数を作成した。その結果、通常のレシーバ関数よりもS/Nの高いPs変換波を抽出することができた。 これらの工夫を行った結果、上記のような付加体に関する地震学的構造を推定することができた。さらに、海洋性地殻に起因するPs変換波も確認でき、その変換波は異方性・傾斜面の影響を受けていることを示唆していた。したがって、今後、付加体・海洋性地殻の異方性に関する研究において非常に重要な貢献を果たすことが期待される。 これらの結果は、日本地震学会2013年度秋季大会において発表された。
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