研究課題/領域番号 |
24740315
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (10423435)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超音波法 / 弾性波速度測定 / 下部マントル |
研究概要 |
焼結ダイヤモンドアンビルを用いた超音波実験を可能にすべく、高圧実験セルの開発と超音波測定システムの最適化をおこなった。高圧実験セルはTEL=3mmの住友電工製焼結ダイヤモンドを使用し、トランケーション面は別途シンテック(株)において鏡面研磨をおこなった。超音波測定システムには新たにデュプレクサを導入し、反射信号のみをオシロスコープに入力し、高いS/Nで超音波エコーを測定することができた。実験は、Al2O3焼結体をテスト試料として用い、超音波エコーが測定できることを確認した。次に(Fe0.2Mg0.8)Oを試料として用い、放射光X線とマルチアンビル装置を組み合わせた弾性波速度測定実験をおこなった。本実験ではスピン転移が生じる下部マントル内の圧力発生(40-60GPa)を実現することを目標としている。超音波測定システムの開発の結果、約10GPaまでの弾性波速度データの取得には成功したが、それ以上の高圧下では超音波信号の消失及び、ブローアウトが発生し、高圧下での試料変形や超高圧発生に課題を残している。今後高圧セルの最適化によって発生圧力を目標とする60GPaに近付けていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
焼結ダイヤモンドを超音波実験に使用する際、従来の超硬合金製のアンビルと様々な物性が異なり、超音波発生の可否とアンビル内の伝達について最初に検証する必要がある。すなわち、アンビル表面の鏡面研磨の可否、高い電気抵抗での超音波振動子の発振、超硬合金に較べて10倍以上粒径が大きいダイヤモンド焼結体での超音波信号の伝達等である。 これらの項目について、詳細に実験・検討を重ねた結果、従来のシステムの軽微な改良によって、焼結ダイヤモンドを用いた超音波実験が可能であることがわかった。これにより、最大の懸念は克服したといえる。高圧セルの最適化の課題があるが、本実験で使用した高圧発生装置(SPEED-MkII)では60GPaを超える圧力発生の多くの実績があり、克服可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
アンビルの先端サイズを現行の3mmから1.5㎜に小型化し、圧力発生効率の向上を図る。通常の高圧実験ではこのサイズのアンビルで、既に60GPa以上の圧力発生が確認されており、超音波実験でも同等の発生圧力の向上が見込まれる。しかしなから、試料の小型化による超音波エコーの弱化が懸念される。超音波システムへのアンプの導入や、S/Nの向上対策を今後行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
更なる高圧下で弾性波速度測定をするために、試料の小型化とそれに伴う超音波エコーの弱化対策をおこなう。半導体リレー(FET-switch)と低ノイズアンプを超音波エコー測定システムに導入し、微弱な超音波エコーでの弾性波速度の測定を可能にする。下部マントルに匹敵する23GPa以上、1600℃以上の高温高圧条件下で弾性波速度を測定する。試料はマントル遷移層から下部マントルに存在するとされる鉱物(Mg-ペロブスカイト、(Mg,Fe)O-マグネシオウスタイト)を主な測定対象とする。 また、平成24年度は試料加工装置の機種選定時間がかかり、繰越金が発生した。繰越金は次年度の焼結体試料の加工治具の購入に充てる。
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