研究課題/領域番号 |
24740317
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
黒田 剛史 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40613394)
|
キーワード | 火星 / 大気大循環モデル / 惑星大気における雲生成 / 大気力学 / 国際研究者交流・ドイツ / 国際情報交換・米国 |
研究概要 |
火星の気候の様子に大きく関わる二酸化炭素の相変化に着目し、申請者が開発してきた火星大気大循環モデル(DRAMATIC MGCM)を用いて、冬の北極域における二酸化炭素大気の凝結(降雪)・季節極冠生成とこの季節に顕著な傾圧不安定波などの大気波動との関連性について研究した論文がGeophysical Research Lettersより出版された。その成果はNature Geoscienceにハイライトされ、東北大学および共同研究を行ったドイツ・マックスプランク太陽系研究所よりプレスリリース発表がなされ、朝日新聞(2013年5月13日付)でも採り上げられた。この研究の成果は日本地球惑星科学連合大会、AOGS、EPSC、COSPARシンポジウム、AGU、Fifth international workshop on the Mars atmosphere、惑星圏研究会の各学会で発表するとともに、NASAのMars Climate Sounder観測チームの興味の対象ともなり、観測データからの二酸化炭素雲の導出について協力関係を築くに至った。 またマックスプランク太陽系研究所と共同で、下層で発生する全球規模のダストストームが上層(下部熱圏)に与える影響についてシミュレーション研究を行い、Journal of Geophysical Researchより出版された。さらに奈良女子大学と共同で、二酸化炭素大気が凍ることによって生じる冬極域の大気組成の変化がどのように大気の温度場・過飽和度に影響を与えるかについて、DRAMATIC MGCMと電波掩蔽観測データを用いた研究を進め、論文投稿を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
火星における二酸化炭素相変化・氷雲生成の研究が注目を集めたことにより、Mars Climate Sounderや電波掩蔽観測データの解析チームとのつながりが生まれ、共同での論文執筆・投稿を含む協力関係に発展した。さらに英国やインドの研究者からも共同研究の声が掛かるなど、国際的な研究協力拠点の構築においては当初予期していなかったほどの進展が見られている。当初予定していたモデルの改良についてはまだこれからという段階ではあるものの、このような国際協力は今後物質循環を含む火星大気の上下結合モデリング研究を進めるにあたって重要な支えとなるもので、それが得られたという点では研究の目的達成に向けた進展状況はおおむね順調といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
地面・表層と大気の間の水の出入り、氷雲の放射効果、化学過程の導入など水循環に絡むMGCMの改良、またデータ同化への準備を引き続き進める。加えて重力波など小規模な大気擾乱の効果について詳細な研究を行うためにMGCMの高分解能化を進める。以上のトピックについて、論文投稿の準備を行う予定である。 さらに今後はこれまでに得られた国際協力関係を軸に、観測データの活用を進める。Mars Climate Sounder観測データを用いた二酸化炭素氷雲の解析およびデータ同化シミュレーションを行うとともに、米国MAVEN探査機が平成26年度中に予定通りデータの取得を開始したら、そこで得られる大気重力波観測等を用いた下層・上層大気間の動的・熱的結合の解明やその宇宙への大気散逸に与える影響に評価について、マックスプランク太陽系研究所と共同でシミュレーション研究を行う。またインド・Physical Research Laboratory(PRL)のHaider教授を平成26年度の夏に招聘し、DRAMATIC MGCMとPRLが所有する火星電離圏モデルとを結合させた共同研究の推進も予定している。 以上の活動を通して、特に火星大気の上下結合・大気散逸に絡む気候変動の研究において強い国際連携の下で大きな進展が得られることが期待される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
特に旅費支出において予算執行を効率的に進めたことにより、618,542円の次年度使用額が生じた。 平成26年度の請求額と合わせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。具体的には、インド・Physical Research LaboratoryのHaider教授の招聘を平成26年度の夏に予定しており、その支出に充てる。
|