研究課題/領域番号 |
24740317
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
黒田 剛史 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40613394)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 火星 / 大気大循環モデル / 大気力学 / 大気物質輸送 / 国際研究者交流・ドイツ / 国際研究者交流・インド / 国際情報交換・英国 |
研究実績の概要 |
申請者が開発してきた火星大気大循環モデル(DRAMATIC MGCM)、あるいは申請者がこれまでの研究活動の中で蓄積してきた解析ツールを用いて、国際的な研究交流に主に力点を置いた。具体的にはインド・Physical Research Laboratory(PRL)のHaider教授を6~7月に東北大学に招聘し、DRAMATIC MGCMの計算結果とPRLが所有する火星電離圏モデルとを結合させた共同研究に着手した。またドイツ・マックスプランク太陽系研究所とも共同研究を続行しており、同研究所のMedvedev氏を2月に東北大学に招聘してその活動を進めた。マックスプランク太陽系研究所とはDRAMATIC MGCMを高分解能化しての計算結果を用いた、重力波など小規模な大気擾乱が上層大気に与える影響についての研究を進めている。さらに英国・オックスフォード大学の火星大気大循環モデルの出力結果を用いた研究にも関与し、申請者の解析ツールを用いた共同研究を進めている。以上の共同研究において、現在論文執筆を進めているところである。 また前年度の実績である火星冬極域の二酸化炭素降雪の研究成果について、COSPARおよび日本惑星科学会の各学会で発表した。さらに火星大気における重力波・大気上下結合シミュレーションについてのレビュー講演を、地球型惑星圏環境に関する研究集会@立教大学、および惑星圏研究会@東北大学(招待講演)において行った。 加えて奈良女子大学と共同で進めていた、二酸化炭素大気が凍ることによって生じる冬極域の大気組成の変化と大気の温度場・過飽和度への影響についての研究成果をまとめた論文が、Journal of Geophysical Researchより出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者がこれまでに蓄積した火星大気に対する研究業績は世界で着実に評価を高めており、幅広く共同研究の声が掛かる国際的な研究協力拠点が形成されつつある。当初予定していたモデルの改良についても、本年度までにDRAMATIC MGCMに導入予定の鉛直1次元計算が可能な放射および大気化学コードは完成し、あとはこれらのコードをMGCMに導入し3次元計算を行うのみとなった。よって物質循環を含む火星大気の上下結合モデリング研究に向けての準備はほぼ整い、残り1年で計算結果を得ることは十分に可能である。以上より、研究の目的達成に向けた進展状況はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている国際共同研究、とりわけドイツおよび英国と進めている研究については申請者が主導で論文執筆を進めており、まずこれらの論文の完成・出版を目指す。DRAMATIC MGCMの開発においては、水循環・氷雲の放射効果および光化学過程を含み地表面から高度約150kmまでをカバーするモデルを完成させ、またそのモデルを用いた高分解能計算を行ってさらなる研究成果を出していき、その成果をもとに観測ミッションや熱圏・電離圏モデリングチームとの相互協力を促進させる。 とりわけ2014年9月に火星周回軌道に投入された米国MAVEN探査機はデータの取得を開始しており、DRAMATIC MGCMを用いた観測データの理論的解釈、および観測データの結果をDRAMATIC MGCMにフィードバックさせることによって、下層・上層大気間の動的・熱的結合の解明やその宇宙への大気散逸に与える影響を評価する研究をマックスプランク太陽系研究所と共同で行うことを予定している。また2016年1月に打ち上げ予定のExoMars Trace Gas Orbiterについても、測器チームのメンバーとコンタクトをとり、モデリングで大気微量物質の観測をサポートする予定である。DRAMATIC MGCMを用いたデータ同化シミュレーションも含め、強い国際連携のもとで火星大気の力学・物質循環の研究に取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
大気化学過程の導入および大気散逸効果とのカップリングが当初の予定より遅れた関係で、出力した計算データの量が当初の見込みより少なく、そのため予定していたハードディスクの購入を見送った。また平成26年度中に予定されていたNASAのMars Climate Sounderチームとの打ち合わせが開催されず、合わせて米国AGU秋学会での成果発表を見送った。以上の結果、70万円の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
大気化学過程の導入で高分解能計算により重点を置く研究方針の修正に伴い、計算結果の解析に用いるより高速なワークステーションが新たに必要になったため、その購入に充てる。また平成26年度中に行えなかったMars Climate Sounderチームとの打ち合わせをはじめ、本課題による研究成果の発信とそれを土台とした共同研究を国内外で拡充するために、申請者の出張および国内外からの研究者招聘の旅費に充てる。
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