インド亜大陸北東部のバングラデシュ、メガラヤ高原、ミャンマー西部領域 (以後、対象領域)は陸上で最も降水が多く、準2週間周期変動が卓越する領域である。本年度は、準2週間周期変動と他の周期帯の変動との位相関係や準2週間周期変動に伴う降水特性等を中心に解析を行った。1979年~2007年夏季(6~9月)の対象領域の降水量時系列にウェーブレット解析を行った。対象年の9割で有意な準2週間周期のスペクトルが確認された。一方、対象年の1割で30~60日周期帯に有意なスペクトルが見られ、これらの年は準2週間周期変動が顕著ではなかった。4日周期以下の総観規模擾乱と他の季節内変動との間に有意な相関関係はなかった。気候学平均したスペクトルでは、準2周期変動は6月上旬よりパワーが上昇し、6月下旬~7上旬にかけてピークを迎え、8月下旬まで比較的強いパワーが持続した。一方、30~60日周期は準2週間周期より2週間ほど早くパワーが上昇し、6月中旬~下旬にピークを示した。 対象領域の降水活発期では、強い南西風が吹き付けるメガラヤ高原南斜面とチッタゴン丘陵帯の西側斜面で特に降水量が多くなる(40mm/day以上)。平野部でも20mm/dayを越える。一方、不活発期には山岳域では約15mm/day、平野部では5mm/day以下まで減少する。バングラデシュ及びメガラヤ周辺では活発期の降水量増加に、降水強度の増加より降水頻度が高くなることが寄与する。活発期と不活発期では下層大気の不安定度に大きな差はない。これは、下層水蒸気量が両期間で大差がないことによる。むしろ、風速の変化が非常に大きく、水平水蒸気フラックスの増減には風速の増減が大きく寄与していることが分かった。また、同領域の平野部・山岳域で降水量が顕著に増加するためには、同領域の発生・発達する水平スケールが600km程度の渦状擾乱が重要であることが分かった。
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