研究課題
最終年度は、AMSR-Eによる衛星データから、日毎の薄氷厚の見積もりと、月毎の定着氷域の検出を行うアルゴリズムを南極海で開発した。この薄氷厚データを用いた熱フラックス計算から、海氷生産量を見積った。さらに南極海全域で沿岸ポリニヤ(薄氷域)ならび海氷生産量と定着氷域のマッピングを作成した。その結果、主要な沿岸ポリニヤの多くが定着氷の西側に形成されることが示され、両者が密接にリンクしていることが示唆された。気象データとの比較から以下の結果が得られた。①定着氷ならびに陸地で定義される境界に対して発散方向の地衡風成分がポリニヤ形成の主な要因である。②定着氷が西向きの沿岸流に伴う海氷の移流を妨げる効果もポリニヤ形成の重要な要因である。③定着氷の急激な変化が、ポリニヤにおける海氷生産量の劇的な変化を引き起こす。このことは、定着氷の変化が南極底層水の変動の重要な要因の一つであることを示唆する。以上の結果から、気候モデルで南極底層水の形成や変動を的確に再現するためには、定着氷を考慮する必要があることが示唆された。示されたマッピングは、定着氷の境界条件を提供するものでもある。研究期間を通じて、北極海、南極海、オホーツク海、日本海で、AMSR-Eによるデータから日毎の薄氷厚の見積もりを行うアルゴリズムの開発を行った。また得られた薄氷厚データを用いた熱フラックス計算から、海氷生産量データセットの作成を行った。さらにオホーツク海では、熱塩フラックスデータセットの作成も行った。熱フラックスは薄氷域の氷厚を考慮して見積もった。塩フラックスは、結氷による塩分排出と、融解に伴う淡水供給を考慮した。海氷の移流も考慮した。年平均した熱塩フラックスの空間分布から、海氷の移流に伴う淡水と負の熱の輸送が示唆された。以上の本研究課題で作成されたデータセットは、モデルの比較・検証や、境界条件に用いることができる。
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