• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

高解像度日本近海モデルを用いた、沿岸・外洋間の海水交換に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24740323
研究機関気象庁気象研究所

研究代表者

坂本 圭  気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 研究官 (60589860)

キーワード海洋物理 / 沿岸海洋モデリング / 海水交換過程
研究概要

計画2年目である本年度は、昨年度に開発した高解像度日本沿岸モデルのシミュレーション結果を元に、沿岸・外洋の海水交換過程とその影響に関する研究を進めた。具体的にはまず、研究計画に沿って、本モデルを用いたトレーサー流し実験を行った。その結果、沿岸の十kmスケールの擾乱運動に伴って、沿岸水が外洋に流出すると同時に外洋水が沿岸に貫入する海水交換過程を、沿岸域に置いたトレーサーの動態として可視化することに成功した。その変動には沿岸流と潮流が主に反映されていたが、それに加えて、黒潮や親潮といった外洋の海流が沿岸水を巻き込む様子も見られた。結果として、海水交換には海域によって大きな違いが見られた。トレーサー流し実験で得られたこれらの結果には、2kmという高いモデル水平解像度と、昨年度に行った潮汐と混合パラメタリゼーションの導入が貢献したと考えられる。
一方、海水交換を引き起こす運動は非常に大きく変動するため、その定量的・統計的な評価が難しいことも明らかになった。適切な評価手法の導入については現在取り組んでいるところであるが、まずは、海水交換過程を十分には表現できない低解像度モデル(水平解像度10km)と比較することで、沿岸域に対する海水交換のインパクトを調べた。その結果、高解像度モデルでは、海水交換が原因と推測される水温変化が見られた。特に瀬戸内海では一年を通して海面水温が2℃近く上昇し、温暖な黒潮水の沿岸流入が原因と考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画の2年目の主な課題とした、日本沿岸高解像度モデルを用いたトレーサー流し実験を実行することができた。その実験結果では、モデルの高い水平解像度によって、変動に富む小スケールの沿岸・外洋海水交換過程をよく再現できた。また、沿岸流、潮流、及び外洋の海流が影響することで、海域によって海水交換が大きく異なる様子も、定性的ではあるが表現された。その定量的な評価に現在取り組んでいるところであるが、低解像度モデルとの比較から、瀬戸内海における2℃の海面水温上昇といった沿岸海況の変化が引き起こされうることも分かった。
さらに、以上の実験と解析に加えて、24年度に開発した、モデルに潮汐を高精度で組み込むための独自スキームの検証も進めた。その結果をまとめた論文が、論文誌「Ocean Science」に受理・出版された。また、論文内容に関して、国際学会「Ocean Sciences Meeting」で発表も行った。

今後の研究の推進方策

研究3年目はまず、2年目で行ったトレーサー実験を元に、海水交換の定量的な評価に取り組む。そのうえで、当初の予定どおり、海水交換における潮汐の役割に焦点を絞って解析を行う。その手順は以下のとおりである。
1. 潮汐を与えない追加実験を行い、潮汐のあり/なし実験の比較によって、海水交換における潮汐の寄与について日本沿岸全域で定量的評価を行う。その結果から、潮汐の寄与の地域・季節依存性を整理する。
2. 明らかにした地域・季節依存性を引き起こす要因について解析を行う。海水交換量はまず第一に潮流の大きさに関係すると考えられ、両者の関係を調べる。ただし、潮汐による海水交換の効率性は海域によって大きく異なることが過去の研究で明らかにされており、両者に単純な関係が成り立たないこともありうる。モデル結果から海水交換の効率性も評価し、その海域間の違いの原因を探る。
3. 2 年目、3 年目の解析結果を整理し、日本沿岸の海水交換過程の全体像を明らかにする第一歩として研究をまとめる。

次年度の研究費の使用計画

論文投稿料の支出を予定していたが、現在も論文は準備中のため次年度使用額が生じた。また、旅費が予定より節約できたことも理由の一つである。
26年度の助成金と合わせて、データ保存のためのLTOテープドライブの購入と、海外学会発表のための旅費に主に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] A practical scheme to introduce explicit tidal forcing into an OGCM2013

    • 著者名/発表者名
      Kei Sakamoto, Hiroyuki Tsujino, Mikitoshi Hirabara, Hideyuki Nakano and Goro Nakayama
    • 雑誌名

      Ocean Science

      巻: 9 ページ: 1089-1108

    • DOI

      10.5194/os-9-1089-2013

    • 査読あり
  • [学会発表] A practical scheme to introduce explicit tidal forcing into an OGCM

    • 著者名/発表者名
      Kei Sakamoto, Hiroyuki Tsujino, Hideyuki Nakano, Mikitoshi Hirabara and Goro Yamanaka
    • 学会等名
      Ocean Sciences Meeting
    • 発表場所
      アメリカ、ワイキキ
  • [学会発表] 日本沿岸海況監視予測システムに向けた瀬戸内海モデルの開発

    • 著者名/発表者名
      坂本圭, 山中吾郎, 辻野博之, 碓氷典久, 平原幹俊, 小川浩司
    • 学会等名
      日本海洋学会秋季大会
    • 発表場所
      札幌

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi