研究課題/領域番号 |
24740325
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
出牛 真 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 研究官 (00354499)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アジアモンスーン / 大気化学 / 成層圏-対流圏結合 / 物質輸送 / オゾン / 全球モデル / データ同化 / 大気環境 |
研究概要 |
本年度は、アジアモンスーン循環が成層圏-対流圏間の物質輸送過程に果たす役割を精密なデータ同化解析場を用いて解明する事を目的として、4次元アンサンブル・カルマンフィルタデータ同化手法を用いたオゾンおよびオゾン関連化学種濃度解析場の作成をおこなった。衛星AuraおよびOMIによって観測されたオゾンおよび窒素化合物などの濃度観測データと気象研究所全球化学気候モデルによる予測データを統合し、地上から中層大気までの濃度時空間分布の解析場を2007年の期間について作成した。衛星観測データの同化にあたっては、観測測器の感度情報をもとにした観測演算子を作成した。作成した同化解析場の精度検証を、オゾンゾンデ観測・他の衛星・地上観測を用いて行なった。この精度検証から、複数の大気微量成分の衛星観測データを同時にデータ同化することにより、各大気微量成分間の化学反応がより整合的に計算され、オゾンなどの解析場の精度が大幅に上がることが明らかになった。また大気微量成分の鉛直構造を詳細に解像できる衛星観測データをデータ同化に用いることが、濃度時空間変動および物質輸送過程の再現にとって重要であることを示した。これら本年度得られた研究成果をとりまとめ、米国地球物理学会および日本気象学会において発表をおこなった。また本年度は、全球および領域化学輸送モデルを用いて20km格子にダウンスケーリングする大気微量成分の予測システムをアジア領域を対象として構築し、その精度評価を行った。この研究成果を学術論文としてまとめ、ヨーロッパ地球科学連合学会誌に論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、気象研究所の全球化学気候モデルに4次元アンサンブル・カルマンフィルタデータ同化手法を適用したデータ同化システムを用いて大気微量成分の解析場の作成を2007年について行ったが、さらに解析期間を延長して行う必要がある。しかし、複数化学種の同時データ同化および鉛直解像度の高い衛星観測データをもちいたデータ同化により同化解析場の精度が大幅に向上し、今後行うアジアモンスーン循環が成層圏-対流圏間の物質輸送過程に果たす役割を精密に解析する事が可能となった。また、20km格子までダウンスケーリングした大気微量成分の予測システムを構築・精度評価したことにより、時空間的により詳細な物質輸送・大気化学過程を解析することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に構築された大気微量成分のデータ同化システムを用いて、さらに解析期間を数年間延長して同化解析場の作成を行う。得られた同化解析場を用いて、アジアモンスーン循環によって影響を受ける対流圏-成層圏物質交換の定量的解析をおこない、時空間に密な解析場でのみ評価可能な物質輸送過程を詳細に明らかにする。この輸送過程の解析にあたっては、気象場から同定されたモンスーン循環の変動と物質濃度変動を統一的に解析する物質輸送収支診断法を用いて実施する。また、ダウンスケーリングした大気微量成分の予測システムを用いて積雲にともなう物質輸送・大気化学過程を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の研究者との詳細な討論や情報交換、及び国内外の学会にて研究成果を発表するための旅費、および研究成果を学術論文として発表する際に関連する費用を計上する。また今年度整備した大容量のデータ保管装置の維持管理に必要な消耗品費も計上する。
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