研究課題
前年度おこなったオゾンや一酸化炭素などの地上から中層大気までの解析場の作成を、さらに期間を延長して2006~2010年(5年間)の期間について実施した。この作成した解析場の精度を、衛星・航空機・ライダー観測などとの比較をとおして検証した。特に、成層圏オゾン解析場の精度検証を複数のモデルから得られた解析場の相互比較とともにおこない、得られた研究成果を学術論文としてまとめ、アメリカ地球物理学連合学会誌に論文として掲載された。さらに、日本に設置された対流圏オゾンライダー観測と解析場の比較検証を行った。この検証から、作成した解析場は対流圏における日本域オゾンの季節変化をおおむね良く再現していることが分かり、定量的な物質輸送特性の解析が行なえることを示した。この研究成果を学術論文としてまとめ、ヨーロッパ地球科学連合の大気観測技術誌に論文として掲載された。また、作成した解析場とインドで得られた航空機観測データを用いて、インド・アジアモンスーン循環が熱帯のオゾン鉛直分布の変動に及ぼす影響を解析した。特にエルニーニョ・ラニーニャそれぞれの期間におけるオゾン鉛直分布の特徴および鉛直輸送特性を明らかにした。この研究成果を学術論文としてまとめ、アメリカ地球物理学連合学会誌に論文として受理された。作成した解析場を用いて、オゾンや一酸化炭素の子午面物質輸送の定量的な解析を実施した。特に、日本のみならずロシアやヨーロッパにおいて猛暑となった2010年夏季において、アジアモンスーン循環の変調が物質輸送に及ぼす影響を解析した。
2: おおむね順調に進展している
本年度計画していた、2006~2010年(5年間)の期間における大気微量成分の解析場の作成を予定通りおこなうとともに、作成した解析場の検証を衛星・航空機・ライダー観測などをもちいて実施した。この検証により、作成した解析場を用いることでアジアモンスーン循環が物質輸送に及ぼす影響を精密に解析することが可能であることを示した。20km格子までダウンスケーリングした大気微量成分の解析場をもちいた物質輸送特性の解析はまだ行なっていないものの、作成した全球解析場をもちいてアジアモンスーン循環の変調が北半球の物質輸送に及ぼす影響の解析は順調に進展した。
20km格子までダウンスケーリングしたアジア域における高解像度解析場をもちいた物質輸送特性の解析を、特に積乱雲に伴う鉛直輸送に注目して行う。またアジアモンスーン循環によって影響を受ける対流圏-成層圏物質交換の定量的解析をおこない、時空間に密な解析場でのみ評価可能な物質輸送過程を詳細に明らかにする。これまで行った全球解析場をもちいた物質輸送の定量的な解析結果と、高解像度解析場をもちいた局地スケールの鉛直輸送特性の解析結果を統合的に解釈することで、局地規模から半球規模の空間スケールにおける物質輸送特性を明らかにし本研究の取りまとめを行う。
当該年度に予定していた海外および国内研究集会の参加を控えたために、次年度使用額が生じた。研究代表者の海外研究集会および研究協力者の国内研究集会の参加に必要な旅費・大会参加費として次年度使用額を使用する予定である。
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