研究概要 |
最新のEnKFスキームの一つであるLETKFを用いてこれまでに構築した大気微量成分のデータ同化システムを利用して、大気汚染を引き起こす化学種の大気中濃度と排出量を同時に推定する再解析システムを構築した。予報モデルには全球化学輸送モデルCHASERを利用し、データ同化の状態変数には予報化学種の大気中濃度に加えてNOxおよびCOの地表排出量と雷によるNOx生成量を含んだ。いくつかの感度実験を実施し、システムの最適化を図った。まず、背景誤差共分散での変数間の局所性を考慮し、化学的な結びつきが弱い化学種間では相関をゼロとしサンプリングエラーの影響を回避すること可能とした。また、各種同化パラメータに対する応答を調査し、対流圏化学システムに特化した最適化を施した。次に、衛星観測データを適切に同化するために、リトリーバル原理に基づく観測演算子を作成した。データ同化には、OMI, TES, MLS, MOPITTによるNO2, O3, HNO3, COの観測データを利用した。また、データ同化結果の検証の為には、SCIAMACHY, GOMES-2, オゾンゾンデ、航空機観測データを整備し、観測特性と時空間代表性を考慮した比較検討を可能とした。作成したデータ同化システムを用いて、1年間程度の長期再解析の実施に着手した。
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