平成25年度に実施した対流圏における大気微量成分の過去8年間の再解析計算について、作成データを詳しく解析し、データの品質に加えてオゾンや二酸化窒素の長期的な変動を調査した。各種気象現象や前駆気体の変動に伴い、オゾンなど各種成分の濃度は季節・経年変動する。データ同化に利用しないオゾンゾンデおよび航空機観測を用いた検証から、それらの時空間変動は再解析データにおいて概ね現実的に再現されていることを確認した。 本再解析計算においては、濃度と同時にオゾン前駆気体の排出量も最適化している。見積もられた排出量の時空間変動を調査することで、各種統計情報に基づき作成されたエミッションインベントリの問題点を指摘した。地上における排出量のみならず、雷による窒素酸化物の生成量についても、パラメタリゼーションに基づく従来のボトムアップ推定に基づく時空間分布には大きな不確定性が存在する可能性を指摘した。 データ同化に用いる化学輸送モデルの性能が、大気微量成分分布の再現性と排出量の推定結果に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで、モデルの設定を変更したデータ同化実験を行い、再解析に対してモデル性能が及ぼす影響を調査した。例えば、各種化学反応係数、地表排出量の日変化、雷による窒素酸化物生成のパラメタリゼーションに変更を加えることで、再解析における濃度場には若干の違いが生じることが明らかとなった。一方、排出量の推定結果はモデルの設定に応じて敏感に変動する部分があり、作成した再解析データの解釈には注意を要する部分があることが明らかとなった。
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