研究課題
本研究では、フレアに伴い観測されるモートン波(太陽コロナ中を伝播する衝撃波と彩層との接地面)やX線で観測される衝撃波、EIT波(極端紫外線撮像観測で見られる波動様現象)について、京都大学飛騨天文台など地上観測によるH-alpha線観測のデータや「ひので」衛星など人工衛星によるさまざまな観測データを解析することで、多角的にコロナ擾乱現象をとらえ、それらの立体構造や時間発展を観測の立場から探るものである。平成25年度は前年度に引き続き、Solar Dynamic Observatory(SDO)衛星(米国・2010年3月打ち上げ)搭載の観測装置Atomospheric Imaging Assembly(AIA)による観測データを用いて、フレアの観測データの収集を行うとともに、データの解析を集中的に行った。特に、2012年3月7日に発生したフレア、2011年8月9日に発生したフレアなどいくつかのイベントについて良好な観測データが得られているため、これらの解析を継続して行っている。特に、これらのフレア衝撃波が遠方にあるプロミネンスに衝撃を与え、振動を励起する現象に着目し、衝撃波の物理的な性質に迫るなどの業績を挙げた。ここまでの研究業績は、招待講演を含め、国際会議や国内研究会等で成果報告した。
2: おおむね順調に進展している
私はSDO衛星AIAの副責任研究者(AI)を務めており、SDO衛星AIAの観測データの取得やデータ解析を国内で主導的に行える立場にあった。また、京都大学飛騨天文台のSMART望遠鏡によるH-alpha線画像や他の人工衛星データについては、即時公開されるものを用いており、データの解析についても豊富な経験があるため、データの入手や解析をスムーズに行えた。これにより、今年度新たに、コロナ衝撃波が遠方にあるプロミネンスの振動を励起する現象に着目し、この解析から衝撃波の物理的な性質について調べることに成功するなど、想定以上に研究が進んだ。一方で、今年度中には出産による研究の一時的な中断があったため、予定していた海外渡航は行えなかった。
平成26年度は、コロナ衝撃波に関する太陽フレアデータの解析を継続して行う。また前年度までの結果に基づき、コロナ衝撃波現象の物理的特徴を明らかとする。また理論モデルとの比較を行う。コロナ擾乱現象に伴って現れるプラズマ噴出現象については、上記データに加えて国立天文台野辺山の電波ヘリオグラフによる電波データを有効活用する。また衝撃波面について「ひので」衛星の極端紫外線撮像分光装置(EIS)による極端紫外線分光撮像データが入手できたイベントについては、さらにコロナ衝撃波のプラズマ診断を行うことで、その物理的特徴を明らかにする。これらの得られた結果を取りまとめ、成果の発表を積極的に行う。
平成25年度に、研究成果発表ならびに情報収集のための海外渡航1件を計画していたが、体調不良のため直前で取りやめることになった。次年度使用額はおおよそこの海外渡航1回にかかる額である。平成26年度に研究成果発表旅費あるいは、研究成果発表に必要な物品の購入に充て、全体の計画としては滞りの無いように遂行する計画である。
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すべて 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件)