研究課題/領域番号 |
24740334
|
研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
中野 慎也 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (40378576)
|
キーワード | データ同化 / 地球磁気圏 / プラズマ圏 / 国際情報交換(米国) |
研究概要 |
開発予定であったリングカレントとプラズマ圏の変動を同時に再現する統合シミュレーションモデルについては,共同研究者よりプログラムの提供を受けることができたため,これに基づいたデータ同化システムの開発を進める方針とした.本年度は,データ同化を実現するための前段階として,プログラムの整理を主に行った. 一方,開発済みであったプラズマ圏データ同化システムについても,手法の問題点の検討と改良を行った.IMAGE衛星の極端紫外光画像データからヘリウムイオン密度分布を推定する際,これまでは磁力線上でプラズマ密度が一様であることを仮定していたが,実際のプラズマ圏は,同じ磁力線上でも高高度ほど密度が小さくなる傾向があることが知られており,密度分布が磁力線上で一様という仮定の下では妥当な推定値が得られない可能性があった.そこで,磁力線上の密度分布の推定への影響を評価するため,ある磁力線上のプラズマ密度が地球中心からの距離の冪乗に反比例することを仮定した上で,冪指数を変えた場合にどの程度推定結果が変わるのかについて,感度解析を行った.その結果,データ同化の過程で衛星の位置が変化する場合には,冪指数の影響が無視できないことがわかった. この感度解析の結果は,観測する衛星の位置が変化するため,ある一定時間に得られる極端紫外光画像データを組み合わせると,プラズマ圏の3次元構造の情報が得られていることを示唆する.そこで,このことを活用し,最尤法によって冪指数の最適な値を求めるという手法を提案した.最尤法では尤度の計算が必要となるが,アンサンブル変換カルマンフィルタの公式に基づいて効率的に尤度を求めるアルゴリズムを提案し,このアルゴリズムを用いて効率的に最適な冪指数の値を求めることができるようになった.また,この冪指数の最適化手法を,人工データに対して適用し,妥当な推定結果が得られることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リングカレント-プラズマ圏統合シミュレーションモデルについては,共同研究者よりプログラムの提供を受けることで,データ同化システムの開発に専念できることになった. 一方,データ同化システムの開発に関しては,プラズマ圏プラズマ密度の磁力線上での密度分布の設定方法が,これまでの大きな懸案事項の一つであった.しかし,アンサンブル変換カルマンフィルタを活用した最尤法を導入することにより,プラズマ密度が地球中心からの距離の冪乗に反比例するという仮定の下で,冪指数をデータから推定することができるようになった.これにより,プラズマ圏プラズマ密度分布や電場分布の推定の信頼性を向上させることができた.このように,内部磁気圏のデータ同化モデルを構築するための基盤を整備することができ,計画全体に対する達成度として考えれば,概ね順調に進んでいると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
リングカレント―プラズマ圏統合モデルに基づく,データ同化システムの開発が当面の課題となる.今年度中にアンサンブル変換カルマンフィルタの統合モデルへの実装を完了して,人工データによるデータ同化実験に着手し,来年度には実際のデータを使った内部磁気圏環境の推定を実現できるように研究を進めていきたい.
|
次年度の研究費の使用計画 |
年度内に論文の投稿料が必要となる可能性があったが,結果的に投稿料が発生するのが次年度となったため. 論文の投稿料および研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である.
|