研究課題/領域番号 |
24740334
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
中野 慎也 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (40378576)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | データ同化 / プラズマ圏 / リングカレント / 磁気圏 / 国際情報交換(米国) |
研究実績の概要 |
当初平成26年度は,リングカレント-プラズマ圏統合モデルへのデータ同化システムの開発を進める予定であった.しかし,近年の地上観測データの充実などの状況を踏まえ,当初考えていた高速中性粒子データや極端紫外光画像データなどの人工衛星からの撮像データだけでなく,地上のグローバル観測のデータを活用することを検討することにし,その検討作業を行った.特に本研究で対象としているプラズマ圏やリングカレントの振る舞いは,グローバルな対流電場パターンに強く支配されているため,地上観測から電場の情報を得ることを目指して以下のような検討を行った. まず,オーロラの高時間分解能地上観測データから観測点周辺の電場の情報を抽出できるかどうかについて検討を行った.オーロラの動きがプラズマドリフトによって駆動されるとすれば,その動きの情報が抽出できれば電場の情報も取り出せることになる.そこで,オーロラの大域的な動きをオプティカルフローを計算することによって数値化し,周辺の電場を推定する手法の開発に着手した. また,グローバルな対流電場分布の情報を得るために構築されたHFレーダー網であるSuperDARNのデータの活用についても検討に着手した.SuperDARNデータから対流電場分布を推定する既存手法は,エコーがない場所の補間の性能に問題があるという指摘もあるため,クリギングなどの空間統計学的手法を用いて補間方法自体を見直すことを検討する一方,レーダーから得られる視線方向速度のデータを直接モデルに取り込むことも検討している. 一方,平成25年度に開発した,プラズマ圏の磁力線上の密度分布を決めるパラメータを一定時間の極端紫外光画像データから推定する手法などのついての論文,高速中性粒子データや極端紫外光画像データのようにノイズがガウス分布に従わないデータを同化するための手法を提案した論文を発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リングカレント-プラズマ圏統合モデルに基づくデータ同化システムの開発に関しては,当初の予定していたほどには進めることができなかった.しかし,オーロラ画像データやHFレーダー網のデータのような地上多点観測データの活用を検討するなど,新しいデータを活用できるようにするための準備を進めており,計画の達成に向けては着実に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
計画の最終年度となるので,アンサンブル変換カルマンフィルタの実装を完了させ,リングカレント-プラズマ圏統合モデルへのデータ同化システムを完成させることに注力したい.また,平成26年度に検討を行った地上観測データの活用も進めながら,データ同化システムの性能の向上を図っていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者と共同で開発する部分を進めるために米国滞在を計画しており,そのために予算を確保していたが,互いの都合が合わず,平成27年度に訪問することになったため.
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次年度使用額の使用計画 |
データ同化システム開発を進めるために,共同研究者の所属するジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所,NASAゴダード宇宙航空センターを訪問することを計画しており,主としてそのための旅費,滞在費に充てる予定である.
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