平成26年度は、一衛星観測から磁気リコネクションのエンジン部分である電子拡散領域の二次元構造を再現するための方程式系(電子流体方程式系)を確立し、それに基づいて再現法の数値コードを開発した。また、電子流体方程式系の解析解を用いて、数値コードのベンチマークテストを行い、開発が成功したことを確認した。 このような開発を行ったのは、磁気リコネクションの基礎物理を解明することを目指す、Magnetospheric Multiscale(MMS)衛星のデータを解析するために、新しい手法が必要であると考えたからである。4機の衛星からなるMMSは、2015年3月13日(日本時間)に無事打ち上げられた。磁気リコネクションは、磁気圏ダイナミクスや太陽フレア等において、中心的な役割を演じているプラズマ過程である。新しく開発したこの革新的な解析手法を用いることによって、磁気リコネクションの散逸メカニズムや効率、電子拡散領域の構造、磁気中性線の方向などを推定できるようになり、磁気リコネクションの理解が大きく進展することが期待される。 また、従来の手法は、衛星観測データを初期条件として用いて多次元構造を再現する、すなわち「初期値問題」を解くものであったが、平成26年度は衛星観測データを境界条件として用いて多次元構造を再現する数値コードも開発した。一衛星のみのデータを解析手法の入力値として用いる場合には、後者の「境界値問題」を解くバージョンは使うことはできないが、複数衛星観測のデータを用いれば境界値を与えることができるようになり、より正確に宇宙プラズマ構造を再現できる可能性がある。境界値問題と初期値問題から導かれる解を比較することにより、どのような条件下でどちらがより正確な解を与えるか、明らかになった。
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