研究課題
東北沖地震では、非地震性領域と考られていた海溝先端まで破壊すべりが伝播し、巨大津波を引き起こしたと考えられている。このような海溝浅部の断層運動の実態を明らかにすることを目的として、プレート境界断層を含む掘削試料、および日本海溝アウターライズで採取された掘削試料の鉱物分析を行った。これらの試料には、オパールや火山ガラスなどの非晶質成分が多く含まれるため、方解石を内標準とする定量XRD分析を行った。分析の結果、断層試料には周囲に比べて著しく高い濃度のスメクタイトが含まれていることが分かった。このようなスメクタイトは、アウターライズでサンプリングされた沈み込む前の堆積物中の遠洋粘土層にも確認することができた。遠洋性のスメクタイトは、プレートの沈み込みに伴ってより高温で安定なイライトへと相変化していくと予想される。日本海溝の温度構造と反応速度論に基づいて、沈み込み帯内部におけるイライト化反応をモデル化してみると、海溝軸から~50kmまではほとんど反応が進まず、それより陸側で急激に反応が進むと予想される。このことは、地震発生時における海溝浅部のすべり挙動が、プレート境界の広い領域に存在する遠洋性スメクタイトに大きく支配されていたことを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までに、ほぼ全深度にわたる掘削試料の鉱物定量を終えることができた。研究計画では、湿式分析によって試料中のオパールの定量を行う予定であったが、技術的な問題などがあり、これについては今年度の課題である。ただし、内標準法によるXRD分析を実施し、非晶質成分を含めた定量値として信頼性の高いデータを得ることができたのは、大きな進展と考えられる。
現在、昨年度に得られた鉱物データに基づいて、プレート境界における脱水モデルを作成しており、断層近傍の水圧状態について検討中である。現段階では試験的なモデルであるが、計画当初に想定していたとおり、プレート境界で異常間隙圧が発生していた可能性が高い。より定量的な水圧生成に関するモデリングを行うため、現在アウターライズで採取されたサンプルを用いた透水試験を行っている。
昨年度は、試料分析の一部(湿式分析)に技術的な課題が生じたことにより、次年度予算として計上することで問題解決にあたることにした。前年度に進まなかった分析項目の実施に係る消耗品費、および新たな試験(透水実験)を行うための旅費、消耗品費として使用する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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