研究課題
1.野外地質調査:岩手県北部に位置するペルム紀-三畳紀境界層(安家森セクション)の地質調査を行い,露頭を研磨して地質構造の観察と,層序の復元を行った.また,葛生,熊本および篠山の地質調査を行い,三畳紀と思われる連続露頭から試料を採取した.試料は大学院生が化石年代の検討作業を進めている.さらに,ニュージーランド北島において地質調査を行い,前期三畳紀の貧酸素環境を反映したと考えられる黒色チャートの連続露頭を新たに見出し,試料を採取した.2.試料の分析:安家森セクションの黒色粘土層の有機炭素同位体比を測定し,前期三畳紀の連続化学層序を得た.さらに還元環境の指標となるフランボイド黄鉄鉱のサイズ計測を行った.これらのペルム紀-三畳紀境界のサンプルを利用して,アリゾナ州立大学の協力のもと,ウラン・モリブデンの安定同位体比を新たに30点測定した.その結果,大量絶滅期に著しく還元環境が発達しさらにモリブデン濃度が海水から減少していたことが明らかになった.他,日本とニュージーランドの前期三畳紀の堆積岩サンプルを粉砕し,次の分析作業に備えている.3.論文公表:ペルム紀-三畳紀境界層の研究についての総説論文を1編,ペルム紀末に深海底に濃集した微量元素について,後期三畳紀の気候変動に伴う遠洋域の粘土組成の変化について,それぞれ国際誌論文を1編ずつ公表した.
2: おおむね順調に進展している
地質調査によって,既存の各セクションの年代の間にあった空白を埋める露頭が発見されてきた.これまでに採取された地層セクションのサンプルについて化学分析が順調に進められた.
ウラン・モリブデンの同位体比の変動について,地球物理学的知見をもつ研究者らと複合的に議論を行い,新たに判明した大量絶滅期の海水組成について論文をまとめる.地質調査で採取されたサンプルの炭素同位体比と微量元素分析の作業を進め,絶滅事変後の海洋環境の推移について言及する.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (20件)
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