砂丘を乗り越えて沿岸低地を遡上する津波からの堆積モデルを考えるため,2地域の巨大津波の堆積物の研究を進めた. 1.東北地方太平洋岸地域:宮城県仙台市若林区の閖上大橋左岸付近で採取した定方位不撹乱試料の層相,粒度分布,磁気ファブリックから津波挙動の復元を試みた.その結果,詳細な津波の流れ変化を読み取ることができた.また,空中写真判読による津波瓦礫オリエンテーションも磁気ファブリックの結果と調和的であった.よって磁気ファブリックによる古流向解析が有効であることを検証できた.この成果は堆積学研究に投稿中である. 岩手県陸前高田市の高田松原公園の海側に設置されていた防潮堤の背後の砂丘地の部分を乗り越える際に,大規模な侵食を発生させ,津波前に陸だった地域が海域となった.この侵食は,津波が防潮堤を乗り越える際の射流による洗掘によるものである.この洗掘により形成された海域から採取した堆積物の詳細な堆積学的解析を行った.その結果,粒径垂直変動は,複数回の逆級化・級化ユニットを認定することができた.また磁気ファブリックは,津波堆積物が主に戻り流れによるものであることを示しており,ここでは主に戻り流れにより堆積物が形成されていた.この成果はJpGU2014年大会で発表し,その後,投稿予定である. 2.北海道西部太平洋岸地域: 北海道西部太平洋岸地域に分布する17世紀津波堆積物の定方位不攪乱試料の記載を行い,帯磁率異方性を測定した.その結果,ばらつきが大きく初生的な粒子配列を示すものが少なかった.しかしながら,賀張海岸から記載した津波堆積物の年代測定の結果,17世紀の津波イベントであることを確認できた.これはこれまでにこの地域では知られていなかったものであり,北海道の津波防災を考えるうえで重要な知見を得ることができた.本補助金終了後も,この地層について重点的な堆積学的解析を継続する予定である.
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