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2012 年度 実施状況報告書

パンサラッサ域における三畳紀/ジュラ紀境界事変への海洋生物の応答

研究課題

研究課題/領域番号 24740348
研究種目

若手研究(B)

研究機関新潟大学

研究代表者

石田 直人  新潟大学, 地域連携推進機構産学地域人材育成センター, 研究機関研究員 (20534746)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード三畳紀/ジュラ紀境界 / 生物大量絶滅 / パンサラッサ / 放散虫化石 / マイクロCT / 三次元形態解析
研究概要

中生代三畳紀/ジュラ紀境界期には,大西洋が拡大し始める際の大規模火成活動に伴って生物の大量絶滅現象が発生した.本研究は,本邦に分布する浅海相・半遠洋相・遠洋相の三畳紀/ジュラ紀境界期の堆積物について,産する化石(放散虫・二枚貝)の群集と形態の変遷をたどることで,当時,大西洋の対極に位置していたパンサラッサ域における生物の応答を解明し,要因の発生源から離れた位置での影響を解明する.
本課題は研究開始以前に十分な予察研究を実施したことで,調査地域の地質の基礎調査と化石抽出用の試料採取は概ね完了している.このため,平成24年度は現地調査を1度にとどめ,放散虫化石の抽出と同定を主とする室内作業に努めた.今年度の特筆すべき成果として,半遠洋相において上部三畳系Norian階から最下部ジュラ系Hettangian階までの連続性が確認されたことを挙げる.
本課題の研究手法のうち,最も新規性が高いのがマイクロCT装置による放散虫化石殻の3次元形態解析である.この技術は,放散虫化石撮影用の機器セッティングに検討の余地を残していた.平成24年度の検討により,放散虫化石殻のX線透過特性とX線波長のマッチングに成功した.また,独自設計による部品を作製することで機器の動作精度を高め,安定化させることに成功した.これにより,平成25年度からは本格的に撮影データの蓄積を開始し,放散虫化石殻の3次元形態解析法の構築へと進むことになる.
成果公表について平成24年度は,地域地質について論文1編を公表したほか,放散虫化石に関する論文を1編投稿中である.また,マイクロCTによる放散虫化石殻の研究について論文1編と著書によって公表したのに加え,国内学会において2件の講演をおこなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度は,成果公表の場として予定していた国際学会への参加を見送ったことを除き,大きな問題を抱えることもなく研究を進めることができた.本課題は採択以前に充分な予察研究を実施していたため,採択後の現地調査や試料採取の負担が軽減され,また,準備に手間取ることもなく円滑に研究を進行した.また研究開始後から研究成果も得られ,初年度から論文として公表できた.
本研究課題の中で,新規性が最も高い反面,重要な検討課題であったのが,マイクロCT機材の放散虫化石撮影用セッティングである.いくつもの試作部品を作製して検討を繰り返したことで,当初の予定より多くの研究費を費やすこととなったが,平成24年度内に実用化の目処が立てることができた.平成25年度よりマイクロCTでの撮影が本格稼働できることは,本課題にとって大きな進展である.マイクロCT撮影に供する放散虫化石は現時点で充分に得られており,今後も蓄積を進める.取得したデジタルデータをソフトウェアによって解析する,三次元形態解析法の構築については,現時点では未着手のままである.これは平成25年の課題とする.
平成24年度内に研究成果として,地域地質および放散虫化石に関する論文を1編ずつ,マイクロCTに関する著書を1編公表し,2つの学会講演をおこなった.このほか3編の論文を投稿準備中である.これらは当初の見込み以上の進展である.
平成24年度の実施内容は,研究費の使用額に当初予定と差があったものの,見込みに沿った研究成果は得られており,今後の計画変更も必要ない.以上を総括して,平成24年度終了時点での総合評価を「おおむね順調に進展している。」とする.

今後の研究の推進方策

本助成金によって平成24年度に研究環境を整備したことで,現地調査,化石の抽出・同定作業等の技術的問題は解消された.引き続き,得られたデータに応じて現地調査と室内作業を繰り返しながら本課題を進める.また,マイクロCTによる放散虫化石殻の撮影についても,平成24年度に一連の撮影法を構築したことにより,今後はデータ取得を順次進めることができる.残された技術的課題として最大のものは,得られたデジタルデータに基づく放散虫化石の三次元形態解析法の構築である.この点は,現有のソフトウェアによって操作が可能であることまでは判明しているものの,実際の撮影データを適用するには至っていない.これは平成25年度のまず解決すべき懸案事項として,早急に着手することにしている.
成果公表の場として,平成25年度に開催される第9回 International Congress on The Jurassic System(2014年1月,インド)は,本課題の研究期間全体を通じて最も重要な成果公表の場と位置づけている.これは本研究テーマに最も合致した専門性の高い国際会議であり,関連する研究者の多くが参加することになる.ここで研究成果を公表することにより,本課題の重要性をアピールできる.さらには,国際的な研究者の連携を築くことも目指しており,これは本課題終了後,発展的な国際的研究課題を提案する基礎とするためである.このほか,国内学会として日本古生物学会2013年年会(2013年6月,熊本大)と日本地質学会第120年学術大会(2013年9月予定,東北大)において,成果発表を予定している.
調査地域の地域地質に関する論文作成はほぼ完了しており,まもなく投稿の見込みである.また,マイクロCTによる放散虫化石撮影に関する技術的内容の論文を現在執筆中であり,まとまり次第,国際誌に投稿する予定である.

次年度の研究費の使用計画

該当なし.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 三重県志摩半島東部の黒瀬川帯中生界から見出されたジュラ紀・白亜紀放散虫化石2012

    • 著者名/発表者名
      太田 亨
    • 雑誌名

      地質学雑誌

      巻: 118 ページ: 588-593

    • DOI

      10.5575/geosci.2012.0030

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Application of Voronoi Tessellation of Spherical Surface to Geometrical Models of Skeleton Forms of Spherical Radiolaria2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Yoshino
    • 雑誌名

      Forma

      巻: 27 ページ: 45-53

    • 査読あり
  • [学会発表] マイクロCT技術のジュラ紀放散虫化石への応用例

    • 著者名/発表者名
      石田 直人
    • 学会等名
      日本地質学会第119年学術大会
    • 発表場所
      大阪府立大学
  • [学会発表] 中生代放散虫Pantanelliumの外層殻を構成する殻孔枠数の多様性

    • 著者名/発表者名
      松岡 篤
    • 学会等名
      日本古生物学会第162回例会
    • 発表場所
      横浜国立大学・海洋研究開発機構
  • [図書] 国立科学博物館叢書13 「微化石」顕微鏡で見るプランクトン化石の世界2012

    • 著者名/発表者名
      谷村 好洋
    • 総ページ数
      276-281
    • 出版者
      東海大学出版会

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公開日: 2014-07-24  

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