研究課題
中生代三畳紀/ジュラ紀境界期には,大西洋拡大開始時の洪水玄武岩噴出(CAMP)に伴って大気・海洋環境が変化し,生物の大量絶滅現象が発生したとされる.本研究は,本邦の異なる堆積環境下にあった三畳紀/ジュラ紀境界期の堆積物について,産する化石(主に放散虫)の変遷から,当時,大西洋の対極に位置していたパンサラッサ域での生物の応答の検出を目的としている.前年度までに,陸棚周縁相および半遠洋相の三畳紀/ジュラ紀境界境界を含む地層については,概要を明らかにしていた.平成26年度は,陸棚周縁相について地域地質を含めて総括し,国内誌に成果を公表した.また,半遠洋相においては,放散虫化石の変遷に基づいて三畳紀/ジュラ紀境界をまたぐ連続性を確認していたが,今年度は詳細な群集の変遷を検討し,ジュラ紀最初期に極めて多様性の低い分類群(Canoptidae科)が占有することを明らかにした.この時期のパンサラッサ西縁では,何らかの環境ストレスによって日和見戦略を取るグループがニッチを占有した可能性が示唆される.全球的温暖化,沈み込み帯周辺,局所的な低多様性群集の産出という条件を満たす要因として,メタンハイドレートの分解が候補に挙げられる.本課題の新規技術として,マイクロCT装置による放散虫化石殻の3次元形態解析がある.この技術は前年度までに放散虫化石殻への実用化に向けた検討を進め,数100nmという極めて高い空間分解能を達成していた.平成26年度は,放散虫化石への適用例を基に新たな古生物学的記載手法としての有用性を評価し,その内容を国際誌に公表した.本課題ではこの技術を用いて,Pantanellium属の極棘の形状計測を実施する予定であった.しかし,極めて偏った放散虫化石群集には目的のPantanellium属はほとんど含まれず,検討は今後の課題として残った.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
地質学雑誌
巻: 121 ページ: 45-58
10.5575/geosoc.2014.0009
Volumina Jurassica
巻: 13 ページ: 77-82
10.5604/17313708.1148661