研究課題/領域番号 |
24740349
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
楠橋 直 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (70567479)
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キーワード | 哺乳類 / 進化 / 真獣類 / 白亜紀 / 中生代 / アジア |
研究概要 |
本研究の目的は前期白亜紀の後半にアジアで真獣類が哺乳類相の主要メンバーとなり始めたことに伴って,哺乳類相がどのように変化したのかを明らかにすることである.研究は,1)標本の収集,2)標本の観察と分類学的検討,3)他産地・地域の既存の標本との比較の 3 点に重点をおいて進めている. 1) に関して,本年度は昨年度同様に中国科学院古脊椎動物與古人類研究所 (IVPP) の協力を得て,中国遼寧省で2週間強の発掘調査をおこなった.その結果,50点以上の前期白亜紀哺乳類化石標本を採集できた.この成果は前期白亜紀哺乳類発掘としては大成功と言って良い.得られた標本のうち,比較的保存の良さそうなものから順にクリーニングが進行中である. 2) に関しては,IVPPに保管されている,過去の調査 (昨年度の調査も含む) で見つかった遼寧省産標本の観察をおこなっている.現在は特に三錐歯類化石と真獣類化石についての分類学的検討を進めており,その結果を論文にまとめているところである.日本の化石についても,石川県の手取層群産の三錐歯類化石について,クリーニングと標本観察をおこなっている.また福島県の双葉層群産の哺乳類化石に関する研究も開始した. 3) に関しては,他産地ではないが,遼寧省産の標本の研究のため,大連自然博物館を訪れ,標本観察をおこなった. また昨年度から引き続き,新たな産地開拓を目指し,ニュージーランドにおいて南島を中心に地層観察をおこなった.現時点で哺乳類化石は発見できていないが,新たな化石産地の発見は大いに期待できると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,1)標本の収集,2)標本の観察と分類学的検討,3)他産地・地域の既存の標本との比較の3点に重点をおくが,昨年度・本年度といずれも順調におこなうことができている.特に中国遼寧省での調査で本年度 50 点を超える哺乳類化石標本が得られたことは,重要な成果である.昨年度の 20 点と合わせると,すでに標本の収集に関しては予想をはるかに上回る成果が得られていると言って良い.本年度中の論文発表には至らなかったが,すでに一部の成果に関しては論文執筆中であり,最終年度中には複数の論文を投稿できる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度も基本的には 1) 標本の収集,2) 標本の観察と分類学的検討,3) 他産地・地域の既存の標本との比較の 3 点に重点をおいて進める.最終年度も標本収集のため再び中国遼寧省での発掘調査をおこなう予定で,中国側の研究協力者とも少しずつ日程の検討を始めている.標本観察もこれまで通り進める.またすでに複数の論文の執筆を開始しており,最終年度中に投稿する予定である.双葉層群産の哺乳類については今夏の国際学会で発表を予定している. 同時にニュージーランドでの化石産地開拓にも引き続き挑戦したい.南半球における新たな化石発見は本研究のみならず,哺乳類進化史の研究自体にとって意義は大きい.
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