研究課題
本研究の目的は前期白亜紀の後半にアジアで真獣類が哺乳類相の主要メンバーとなり始めたことに伴って,哺乳類相がどのように変化したのかを明らかにすることである.最終年度の研究は,1) 標本の収集,2) 標本の観察と分類学的検討に重点をおいて進めた.1) に関して,本年度もこれまで同様に中国科学院古脊椎動物與古人類研究所 (IVPP) の協力を得て,中国遼寧省で2週間ほどの発掘調査をおこない,100 点ほどの脊椎動物化石 (内哺乳類は 26 点) を採集できた.前年度までよりも稼働炭鉱数が減っており,またやや化石の出も悪かったが,それでも前期白亜紀哺乳類化石採集としては、成功だったと言える.得られた標本のうち,保存の良いものから順に IVPP においてクリーニングが進行中である.2) に関しては,IVPPに保管されている,過去の調査 (昨年度の調査も含む) で見つかった遼寧省産標本の観察をおこなった.そのうち“三錐歯類”化石については論文を投稿し受理済みである.また真獣類化石についての分類学的検討も進めており,論文執筆中である.日本の化石についても,石川県の手取層群産の三錐歯類化石について,引き続きクリーニングと標本観察をおこなっている.また同層産のトリティロドン類化石についても論文をまとめて投稿中である.また福島県の双葉層群産の哺乳類化石に関しての学会発表をおこない,こちらも論文を投稿中である.研究期間全体を通して,第一の目的であった哺乳類化石の採集については 100 点以上の標本採集に成功し,期待以上の成果が上がった.これらの化石について順次分類学的研究を進めることで,前期白亜紀後半の東アジアにおける哺乳類相の変化をかなりの解像度で明らかにすることができる.その分類学的検討も,比較的順調に進んでいるので,近い将来には本研究の成果をもとに,さらに少なくとも 2 ~ 3 篇の論文を出版できると考えている.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Historical Biology
巻: 不明 ページ: 不明