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2012 年度 実施状況報告書

無水鉱物の水素含有量に着目した島孤玄武岩マグマの含水量の定量化

研究課題

研究課題/領域番号 24740355
研究機関東京工業大学

研究代表者

濱田 盛久  東京工業大学, 理工学研究科, 流動研究員 (60456853)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード斜長石 / 無水鉱物の水 / 島孤玄武岩 / マグマ / 水
研究概要

火山岩中の無水鉱物には,ppmオーダーの微量の水素が不純物として含まれている.無水鉱物の水素含有量は,メルトに溶存している水の量や挙動の指標として利用可能と考えられる.本研究では,無水鉱物の水素含有量を系統的に明らかにすることにより,島孤玄武岩マグマの含水量や,噴火時の脱ガス過程を明らかにすることを目指している.
平成24年度においては,無水鉱物の中で,特に研究例が少ない斜長石に焦点を当て,斜長石-メルト間の水素の分配実験を行った.その結果,メルトの含水量が<1 wt.%である時,
斜長石の水素含有量(wt. ppm water)=80×(メルトの含水量,wt.%)
であり,メルトの含水量が>4 wt.%である時,
斜長石の水素含有量(wt. ppm water)=40×(メルトの含水量,wt.%)
であるという経験的な結果が得られた.メルトの含水量が1~4 wt.%の時は,斜長石の水素含有量は2つの近似式の間を遷移していく.これと調和的に,メルトの含水量が<1 wt.%である時,分配係数(モル換算)は0.01であるのに対して,メルトの含水量が>4 wt.%である時,分配係数は0.005へと半減する.すなわち,低含水量の条件下では,斜長石へは相対的に水素が分配されやすいのに対して,高含水量の条件下では,斜長石へは相対的に水素が分配されにくくなる.上述したような,玄武岩質メルトの含水量と斜長石斑晶の水素含有量の対応関係を用いて,斜長石の水素含有量がマグマの水量計として用いることが可能であることが示される.例えば,80 wt. ppm waterの水素含有量の斜長石は,共存するメルトの含水量1 wt.%に相当する.また,250 wt. ppm waterの水素含有量の斜長石は,共存するメルトの含水量6 wt.%に相当することが分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験によって,斜長石に水素を分配される実験で研究成果を上げた一方,天然の無水鉱物中の水素の分析や,二次イオン質量分析計(SIMS)を用いた無水鉱物中の水素の分析準備が遅れている.その理由は,平成24年度においては,斜長石‐メルト間の水素の分配に関する実験的研究を精緻に仕上げて論文化することに力を注いだためである.また天然の無水鉱物の分析が遅れているもう一つの理由としては,天然試料の選定を再検討中であることも挙げられる.

今後の研究の推進方策

今後は,やや進捗が遅れている天然の無水鉱物中の水素の分析と,二次イオン質量分析計(SIMS)を用いた無水鉱物中の水素の分析を精力的に進める.研究代表者の濱田は,平成25年4月に,東京工業大学から独立行政法人海洋研究開発機構に異動した.海洋研究開発機構においては,高知コア研究所に二次イオン質量分析計が導入されている.これまでの,所属機関外(独立行政法人産業技術総合研究所)の装置を使わせてもらうという研究計画から,所属機関内の装置を利用するという研究計画のへ変更も視野に入れて,研究の推進を図っていきたい.
次年度に94,261円を繰り越す理由は,研究の進捗がやや遅れており,SIMSの分析のために必要な旅費が使われなかったためである.この経費は,次年度に繰り越して,SIMS分析のために必要な旅費として有効に活用したい.

次年度の研究費の使用計画

無水鉱物中を水素が拡散する速度を決定する高温高圧実験のために必要な消耗品(貴金属パイプとアルゴンガス)に50万円,旅費(岩石試料採集のための出張旅費およびSIMSを用いた無水鉱物中の水素含有量の分析のために必要な旅費)に40万円,研究成果を論文として出版するために必要な経費(9万円)を見込んでいる.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Hydrogen concentration in plagioclase as a hygrometer of magmas: Approaches from melt inclusion analyses and hydrous melting experiments2013

    • 著者名/発表者名
      Hamada, M., Ushioda, M., Fujii, T., Takahashi, E.
    • 雑誌名

      Earth and Planetary Science Letters

      巻: 365 ページ: 253-262

    • DOI

      10.1016/j.epsl.2013.01.026

    • 査読あり
  • [学会発表] Caに富む斜長石中の水素の拡散速度の決定2013

    • 著者名/発表者名
      濱田盛久
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉市)
    • 年月日
      20130519-20130524
  • [学会発表] 斜長石から見た島孤マグマの含水量2013

    • 著者名/発表者名
      濱田盛久
    • 学会等名
      地殻流体研究会2013
    • 発表場所
      ラフォーレ修善寺(静岡県伊豆市)
    • 年月日
      20130301-20130304
  • [学会発表] Hydrogen concentration in plagioclase as a hygromter of magmas: Approaches from melt inclusion analyses and hydrous melting experiments2012

    • 著者名/発表者名
      Morihisa Hamada, Masashi Ushioda, Toshitsugu Fujii, Eiichi Takahashi
    • 学会等名
      2012 Fall Meeting of the American Geophysical Union
    • 発表場所
      米国・サンフランシスコ
    • 年月日
      20121203-20121207
  • [学会発表] 斜長石の水素含有量を用いるマグマ水量計の確立―メルト包有物分析と含水融解実験からのアプローチ2012

    • 著者名/発表者名
      濱田盛久,潮田雅司,藤井敏嗣,高橋栄一
    • 学会等名
      日本火山学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      エコールみよた(長野県御代田町)
    • 年月日
      20121014-20121016
  • [学会発表] インド洋中央海嶺三重点玄武岩の斜長石のOH含有量2012

    • 著者名/発表者名
      濱田盛久,藤井敏嗣
    • 学会等名
      日本鉱物科学会
    • 発表場所
      京都大学(京都市)
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 斜長石-玄武岩質メルト間の水素の分配実験2012

    • 著者名/発表者名
      濱田盛久,潮田雅司,高橋栄一
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2012年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉市)
    • 年月日
      20120520-20120525

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公開日: 2014-07-24  

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