研究概要 |
火山岩の無水鉱物には、ppmオーダーの微量の水素が不純物として含まれている。無水鉱物の水素含有量は、共存するメルトに溶存している水の含有量や、脱ガス時の水の挙動の指標として利用可能である。本研究ではこれまで、島弧玄武岩の斑晶鉱物である斜長石(無水鉱物)の水素含有量を分析することにより、斜長石-メルト間の水素の分配を明らかにする(平成24年度)などの研究に取り組んできた。 平成25年度においては、1000℃~1200℃の温度条件で内熱式ガス圧装置を用いた水熱実験を行い、斜長石中に水素が浸透していく場合の拡散係数を決定した。斜長石の外縁部から内部に向けて、水素が距離に応じてどのように拡散していくかを、赤外分光高度計(FTIR)を用いて定量化し、拡散係数を求めた。これらの結果は、従来、斜長石から水素を放出させる比較的低温(1000℃以下)での実験によって制約された拡散係数の温度依存性が、島弧玄武岩マグマに相当する高温側に外挿しても成立することを示した。 本研究の一環として、平成25年度には、伊豆大島火山の火山岩の全岩化学組成を用いて、マグマの結晶分化作用の圧力・含水量の条件について岩石学的検討を行った。その結果、伊豆大島火山のマグマは水に飽和しており、比較的深いマグマ溜まり(圧力は200MPa)では水に富むが火口付近の浅部では水に乏しいことが分かった。さらに、異なる深度(含水量)のマグマが噴火史を通じて混合して噴火に至ったことを議論した(Hamada et al. 2014, Earth, Planets and Space)。この議論は、伊豆大島火山の斜長石の水素含有量の分析から得られた私の先行研究(Hamada et al. 2011, Earth and Planetary Science Letters)と整合的である。本研究を通じて、無水鉱物中の水素に着目した本研究と、従来の岩石学的研究とが整合的に結びつけられた。
|