研究課題
35 GPaまでの酸化マグネシウム(MgO)の融点を決定した。圧力発生としてダイヤモンドアンビルセル、加熱に開発した炭酸ガスレーザー装置を用いた。レーザー出力と試料温度の関係を取得した。その関係内で加熱効率の不連続な変化が見られた。加熱後の試料を走査型電子顕微鏡で観察したところ、液体から固化を経験して再結晶化したと考えられるファイバー状の結晶が加熱領域に見られた。この観察結果を考慮して加熱効率の不連続な変化が見られた温度を融点とした。この融解判断基準は昨年度の氷の融点計測で開発した手法であり、正確な手法として既に確立している。本研究で決定した融点はZerr and Boehler et al., Nature (1994)の結果と一致している一方、多くの第一原理計算に基づいた予想よりも最大約1500 Kも低かった。本研究の融点データをサイモンの式に則って得られた融解曲線は、約50 GPaでマグネシウムペロフスカイト(MgSiO3)の融解曲線と交差する。これは初期地球のマントル形成過程において、50 GPa以上ではMgSiO3の方がMgOよりも先に固化することを意味する。この研究成果は地球科学の国際学会であるAOGS 11th Annual meetingで口頭発表予定である。炭酸ガス連続光レーザーのパルス化を試みた。レーザー出射後にAO変調器をセットした。レーザー放射光をAO変調器に通すことで200 ns程度の時間幅をを持ったパルスを成形することができる。AO変調器の前にスイッチミラーをセットして、AO変調器に通さずに連続光レーザーとしても使用できるようにした。以上の行程により、パルスレーザー加熱を行うことができるようになり、超イオン相から氷への相転移メカニズムを調べることが可能となった。
3: やや遅れている
氷とMgOの融点計測に成功した。さらに、パルスCO2レーザーの開発にも成功した。従って、本研究の目標を達成するために必要な加熱に計測に関する技術開発は完了し、超イオン相から氷への相転移メカニズムを調べる環境は整った。水の熱拡散率計測は試料室内に金属の熱吸収体を必要とする。しかし、高温高圧下の水は高い反応性を持ち、周囲の物質と深刻な反応を起こすため、水と反応しない金属を見つける必要がある。本研究では、数種類の貴金属(レニウム、プラチナ、金、イリジウム)を水で満たされた試料室内に別々に含ませて、高圧高温状態を生成した。加熱後のラマンスペクトルは、どの金属を用いた場合でも加熱前よりも水の分子振動モードのピーク強度が極端に下がっていることがわかった。従って水は上記の金属全てと反応することが明らかとなり、本研究の手法で熱拡散率計測を行うことが困難であることがわかった。しかし一方で、CO2レーザーは惑星科学に対して重要なメタン、アンモニアといった軽元素分子の加熱に適している。さらに、これまでの研究で開発した融解判断基準法は、MgOの融点計測でも実証できたように、水以外の物質でも適用できる。従って、これまで開発した技術を使ってメタンやアンモニアの高圧下の融点及び分解挙動を調べることができる。以上のように、熱拡散率計測を行うための技術開発には成功したが、水の高い反応性の問題により計測を実現することが難しいことがわかった。しかし、開発した技術と手法は水以外の物質にも応用できることを明らかにしたため、研究はやや遅れているが、今後の方針は明確である。
1. 開発した加熱技術を用いて、超イオン相から氷への相転移メカニズムを解明する。目的の圧力までダイヤモンドアンビルセルで圧縮した氷試料にパルスレーザーによる加熱を行い、加熱後の冷却過程における試料の温度履歴を計測する。超イオン相から氷への転移が一次相転移であれば、潜熱に伴った温度減少の停滞が観察されることが予想される。このように、温度履歴計測により、超イオン相から氷への相転移メカニズムを明らかにする。2. 高圧力下のメタンとアンモニアの融点を計測する。氷、MgOの融点計測と同様の方法を用いて、融点の決定を試みる。高圧力下での試料のレーザー出力と試料温度の関係を調べる。この関係内に見られる、加熱効率の不連続な変化に相当する温度を融点とする。
当初予定していた学会の参加を見送り、代わりに次年度の別の国際学会に参加することにしたため。また、装置開発に必要な実験消耗品と研究成果投稿料の一部を別の予算から支払ったため。ダイヤモンドアンビルとして20万円。学会出張費として20万円。論文投稿料として4万円。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) 備考 (1件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 140 ページ: 074501
10.1063/1.4865252
http://www.ehime-u.ac.jp/~grc/