研究課題
天王星や海王星内部のマントルは水、メタン、アンモニアといった軽元素化合物で構成されており、一方、さらに深部のコアは酸化マグネシウムや二酸化ケイ素等で形成されていると考えられている。これらの融解挙動や、熱拡散率及び電気伝導率といった物性値は、惑星内部の構造や磁場の生成メカニズムを理解する上で必要不可欠である。本研究により、パルス炭酸ガスレーザー加熱法の開発に成功し、この新しい加熱法を用いて、氷、酸化マグネシウム、アンモニアの融点決定に成功した。本研究初年度に実施した実験で、高温高圧下の水は種々の貴金属と化学反応を起こすことを明らかにし、単純な近赤外線レーザーによる加熱では水の熱拡散率計測を実現することが困難であることがわかった。この問題に対して、周囲の物質との反応を回避できる炭酸ガスレーザーの加熱による解決法を提案し、次年度にはその開発を成功させた。さらに、同年度に新しい加熱法を用いて、高圧下の氷の融点計測を実現し、72 GPaまでの氷の融点の決定に成功した。最終年度では、誘電体の加熱に優れる炭酸ガスレーザーの特徴を利用し、開発した加熱手法を酸化マグネシウムの融点計測に応用した。この計測に基づいて、過去の見解の食い違いを解決し、32 GPaまでの融点決定に成功した。また、同手法をアンモニアの融点計測にも応用し、18 GPaの融点決定に成功した。さらに、融解後のアンモニアは窒素と水素に分解することも明らかになった。以上の実験研究から、天王星や海王星のマントルは液体の水で構成されていることが明らかになった。惑星磁場の生成に関わるマントル内の非対流層は、これまで予想されていたような氷ではなく、アンモニアやメタンが分解した後に生成する窒素やダイヤモンドで構成されている可能性が示された。
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