研究概要 |
本研究は、炭素質隕石及び彗星物質の鉱物学的特徴と分光学的特徴から、太陽系初期の小天体の進化の条件に制約を与えることを目的としている。 今年度は、これまで発見された隕石の中でも、もっとも始原的な隕石の一つとして知られる、Y-81020隕石(炭素質COコンドライト)中と、母天体の異なる、すなわち様々な程度の2次変成を経験した隕石Bali, Y-86009, Efremovka, Y-86751(CVコンドライト), NWA1152(CR/CVコンドライト), 彗星粒子(C2067,2,112,1)の比較を行った。 化学的・組織的特徴からのアプローチとして、特に、それぞれの炭素質コンドライト中に含まれるAOA(Amoeboid Olivine Aggregates;かんらん石集合体)に含まれるかんらん石に着目した。それぞれの隕石に含まれるAOAかんらん石の化学組成を比較した結果、隕石(彗星粒子)ごとにMnやCrの微量元素に大きな違いがあることが分かった。平衡凝縮計算モデルを合わせると、それぞれの母天体が異なる温度から凝縮した鉱物情報を保存していることが示唆された。このことは、隕石母天体である小惑星は、形成時の位置により、それぞれ異なる温度域から凝縮した物質を取り込んだことを意味している。 本研究で用いた隕石について、UV-NIR範囲での拡散反射スペクトルを比較したところ、Allende隕石は、他の隕石に比べ、かんらん石に起因するFeO吸収が明確に表れることが分かった。このことは、母天体での変成過程が、反射スペクトルに変化を生じていることを示している。 以上の結果を、地球惑星科学連合大会(2013年5月20~24日)、第46回南極隕石シンポジウム(2013年11月14-15日、国立極地研究所、東京)、日本惑星科学会秋季講演会(2013年11月20-22日)、The 46th Lunar and Planetary Science Conference (2014年3月17-21日、アメリカ、ヒューストン)にて発表を行った。
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