研究課題/領域番号 |
24740370
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 正晴 神戸大学, その他の研究科, 助教 (40626264)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ粒子シミュレーション / マルチスケール / 宇宙プラズマ / 小型磁気圏 |
研究概要 |
地球磁気圏を離れた惑星間空間では、太陽風と呼ばれるプラズマ流が存在することが知られている。この太陽風プラズマを宇宙機が作る人工的な磁場で受け止める、つまり、太陽風の運動エネルギーを宇宙機の推進力に変換する磁気プラズマセイル推進が提案されている。惑星間を航行する磁気プラズマセイルの推力特性とプラズマ現象の定量的評価を行うために平成24年度は主にHybrid-PICモデルとHall-MHDモデルの階層連結による数十kmから数mオーダーまでのマルチ空間スケール宇宙プラズマシミュレーション手法の開発のための各種要素技術の検討を行った。 特に、上記モデルの空間接続を行う上で重要となる磁場の誘導方程式の解法についてPICモデル側からの改良を行い、計算安定性と精度を向上させることができた。そしてその知見を基にMHDモデルとの空間接続を試みる1次元テストコードを作成し、評価・検討を行った。階層連結の方法に関してはいまだ決定的な方法論が定まったわけではないが、いくつかの方法論でテストを進めそれらの基礎データを取得した。 また一方で、階層毎の空間分解能やプラズマの運動論効果の考慮など、連結階層モデルに対する具体的な要件を挙げることを目的としたHybrid-PICコードによる磁気プラズマセイル解析を行った。Hybrid-PICモデルでは計算可能な範囲の低密度プラズマ噴射による磁気プラズマセイル全系シミュレーションを行い、将来的に得られるであろう連結階層モデルによる解析結果と比較・検討を行うためのデータの蓄積を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、磁気プラズマセイルの推力特性とプラズマ現象の定量的評価を行うためのマルチ空間スケール宇宙プラズマシミュレーション手法を開発することにあるが、そのための最重要要素技術であるHybrid-PICモデルとHall-MHDモデルの階層連結の方法論がいまだに決定できておらず、今年度の当初計画である無衝突衝撃波上下流域における粒子加速機構の解析を行うための1次元テストコードがいまだ完全には完成できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は昨年度の計画を引き続き行い、Hybrid-PICモデルとHall-MHDモデルの階層連結の方法論について検討・評価を行う。そして本格的に連結階層モデルを二次元空間に拡張し、多次元性を考慮する際に現れる問題点を洗い出しその対策を行う。テストモデルとして1次元計算で得られた無衝突衝撃波を二次元で模擬したのち、小型磁気圏と太陽風プラズマ流との相互作用の解析に取り掛かる。ここで得られた結果について国内外における学会発表等で研究成果を報告する。 一方で、Hybrid-PICコードに非一様直交格子システム手法の一つである多層格子(Nested -grid)を導入し、それによる大規模シミュレーションを行うことにより磁気プラズマセイル解析を試みる。つまり、Nested-grid 化により宇宙機近傍のみを高解像度にすることで、プラズマ噴射による高密度領域に対応する。これは将来的にNested-grid 化した領域をHall-MHDモデルに置き換えることを前提に、まずはHybrid-PICモデルによるNested-grid 化を行い、将来的に得られるであろう連結階層モデルによる解析結果と比較・検討を 行うためのデータの蓄積を行う。この結果の分析を行うことにより、マルチスケール的観点から見た問題点を洗い出し、それを克服するために必要とされる階層毎の空間分解能やプラズマの運動論効果の考慮など、連結階層モデルに対する具体的な要件を挙げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
計算コードの開発に重点が置かれている本研究において、試作したコードを計算させるサーバが必要不可欠であり、これは並列化(スレッド、プロセスともに)を考慮に入れてコードは試作されるため、その計算環境は小規模なプロセス並列計算が行える程度のサーバが必要であるとの観点から平成24年度当初計画では主に計算用のワークステーション、計算結果のデータを整理するためのノートPC(これは出張などでも用いる予定)、計算結果を可視化するためのソフトウェア、計算結果のグラフを加工するための画像処理ソフトウェアなどに多くの予算を計上していたが、実際には、京都大学や神戸大学に設置されているスーパーコンピュータを幸運にも無償で使用することができたため、これらの予算は研究費が基金化されていることもあり、来年度以降に持ち越しさせていただいている。 平成25年度は平成24年度に引き続いて上記の設備を使わせていただけるとのことから、研究費は主に消耗品としてデータ保存・バックアップ用HDD、国内・海外での研究成果の発表、または論文誌に投稿するための費用に使用する予定である。
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