研究課題/領域番号 |
24740370
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 正晴 東京大学, 情報基盤センター, 講師 (40626264)
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キーワード | プラズマ粒子シミュレーション / マルチスケール / 宇宙プラズマ / 小型磁気圏 |
研究概要 |
地球磁気圏を離れた惑星間空間では、太陽風と呼ばれるプラズマ流が存在することが知られている。この太陽風プラズマを宇宙機が作る人工的な磁場で受け止める、つまり、太陽風の運動エネルギーを宇宙機の推進力に変換する磁気プラズマセイル推進が提案されている。惑星間を航行する磁気プラズマセイルの推力特性とプラズマ現象の定量的評価を行うためには、数十kmから数mオーダーまでのマルチ空間スケールに対応するプラズマシミュレーション手法の開発が必要不可欠である。 平成25年度は当初計画を変更し、従来から研究開発を進めていた適合格子細分化(AMR)法をプラズマ粒子法に取り入れた解析手法(AMR-PIC法)の開発と応用を行った。従来のFull-PIC法はプラズマ中の電子・イオンをともに超粒子として取り扱う手法であり、全粒子の運動論効果を取り入れた第一原理的シミュレーションを行うことができる一方で、電磁場が定義される格子間隔をプラズマのDebye長程度に設定しなければならず、広い領域を対象としたシミュレーションを行うことが難しい。AMR法を導入することにより、シミュレーション内に生起する現象の空間的特性長を各格子点においてモニターし、それに対応した最適な空間分解能をもつ格子システムを局所階層的、かつ動的に構築することができ、その結果としてマルチスケールシミュレーションが可能となる。この応用として、磁気セイル推進に現れる小型磁場構造と太陽風プラズマの相互作用に関するAMR-PICシミュレーションを行い、その解析手法の有効性と課題を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の研究の推進方策で述べているとおり、平成25年度から研究計画を変更したことで、磁気セイル推進に現れる物理現象のマルチ空間スケールにおける解析が可能になりつつあり、その重要な物理現象の一つである小型磁場構造と太陽風プラズマの相互作用に関する解析を行っていることによる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の当初計画では、Hybrid-PICモデルとHall-MHDモデルの階層連結によるマルチ空間スケール宇宙プラズマシミュレーション手法を開発する予定であった。しかし、その最重要要素技術である階層連結の方法論が未だに決定できていない。そこで、当初計画であった異なる計算モデルの連結階層によるマルチスケール化ではなく、単一の計算モデル(Full-PICモデル)への適合格子細分化手法の導入によるマルチスケール化(AMR-PIC法の開発)へ計画を変更した。 AMR-PIC法の方法論についてはすでにこれまでも研究を進めており、小型磁気構造と太陽風プラズマの相互作用に関するAMR-PICシミュレーションも行っている。今後は、更なる計算精度の向上を目指し、格子細分化に伴う階層間の物理量の取り扱い方法の検討や、大規模並列化を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の当初計画では、比較的小規模なプロセス並列計算が行える程度の計算機が必要であるとの観点から、主に計算用のワークステーション、計算結果のデータを整理するためのノートPC(これは出張などでも用いる予定)、計算結果を可視化するためのソフトウェア、計算結果のグラフを加工するための画像処理ソフトウェアなどに多くの予算計上をさせていただいたが、平成24、25年度においては、東京大学、京都大学、神戸大学にそれぞれ設置されているスーパーコンピュータを幸運にも無償で使用できる研究環境にあったこと、また、本研究課題を含む研究発表や出張にかかる費用の大部分を別予算で執行することができたこと、そしてなにより、予算の適正使用の観点から、上記目的以外の予算執行は控えるべきと判断したこと、などの理由から、予算の大部分を平成26年度に持ち越しさせていただいている。 平成26年度は平成25年度に引き続き、上記の研究設備を使わせていただけることから、研究費は主に、計算結果を可視化するためのソフトウェア、消耗品としてデータ保存・バックアップ用HDD、国内・海外での研究成果の発表、または論文誌に投稿するための費用に使用する予定である。
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