地球磁気圏を離れた惑星間空間では、太陽風と呼ばれるプラズマ流が存在することが知られている。この太陽風プラズマを宇宙機が作る人工的な磁場で受け止める、つまり、太陽風の運動エネルギーを宇宙機の推進力に変換する磁気プラズマセイル推進が提案されている。惑星間を航行する磁気プラズマセイルの推力特性とプラズマ現象の定量的評価を行うためには、数十kmから数mオーダーまでのマルチ空間スケールに対応するプラズマシミュレーション手法の開発が必要不可欠である。 最終年度は、昨年度まで開発を進めていた適合格子細分化(AMR)法をプラズマ粒子法に取り入れた解析手法(AMR-PIC法)を磁気セイル環境のシミュレーションへ適用を進めるとともに、スキームの応用研究の一環として、イオンエンジン環境のシミュレーションへの適用を行い、その有効性と課題を明らかにした。 本研究では当初計画において、電磁流体近似を施したHall-MHDモデルと、電子を(慣性の無い)流体と仮定し、イオンを粒子として取り扱うHybrid-PICモデルを連結させることによってマルチスケールにおけるプラズマシミュレーション手法の開発を目的にしていたが、このような2つの異なる計算モデルの階層連結ではなく、単一モデル(Full-PIC法)への適合格子細分化手法の導入によるマルチスケール化へと計画を変更した。開発したコードの計算精度向上や格子細分化に伴う階層間の物理量の取り扱い等、多くの課題は残されてはいるが、磁気セイル環境のシミュレーション結果も得られつつあり、当初の目的であったマルチ空間スケール対応のプラズマシミュレーション手法の開発という観点については一定の実績が得られたものと考えられる。
|