研究課題/領域番号 |
24740371
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 儀一郎 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (90422435)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 微粒子プラズマ / 孤立波揺動電界 / 帯電微粒子輸送 / ナノ粒子量子ドットデバイス |
研究概要 |
本研究では外部パルス信号印加により,プラズマ中微粒子をデジタル的に精密輸送する革新的技術を開発する.具体的には,孤立波への帯電微粒子のトラップを実現し,孤立波励起数によりデジタル的に微粒子の輸送距離を制御する.本年度は孤立波励起プラズマ生成装置と微粒子観測システムを構築した.その結果,反応性ガスを用いて時空間的にほぼ均一な微粒子プラズマの生成に成功した.具体的には,Ar (40sccm) で希釈したDM-DMOS (Si(CH3)2(OCH3)2)を0~0.33 sccm 供給し,反応性放電プラズマを生成した.プラズマ中で発生した微粒子の挙動を観察するため,YAGレーザー光(波長532 nm)を入射し,微粒子群による散乱光強度をCCDカメラで測定した.またAr1s5準安定粒子密度を,レーザー吸収分光法(772.37 nm)により測定した.その結果,以下の事柄が明らかになった. 1)微粒子発生にともない,Ar1s5準安定粒子密度が急激に増大し,微粒子の発生がプラズマパラメータを大きく変化させることを明らかにした. 2)微粒子粒径がしきい値を超えると,微粒子群中にボイド構造が発生することを明らかにした.この発生メカニズムを解明するために,微粒子プラズマ挙動に関するMDシミュレーション解析を行った.微粒子に作用する力としてイオン流に起因するイオン抗力を考慮した結果,実験で観測されるような微粒子群ボイド構造がよく再現され,微粒子に作用するイオン抗力が,微粒子輸送,並びに微粒子群構造形成に大きく寄与することが明らになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では外部パルス信号印加により,プラズマ中微粒子をデジタル的に精密輸送すること,また,この輸送技術を用いてナノ粒子膜の堆積を行うことを研究の2本柱としている.この目標に対して本年度は,反応性ガスを用いて,空間的にほぼ均一な微粒子プラズマの生成に成功し,微粒子観測システムを構築した.この反応性微粒子プラズマ生成装置を用いることで,ナノ粒子の生成,並びにナノ粒子膜の堆積が可能である.微粒子輸送を目的とした外部電場印加実験もすでに開始しており,本研究はおおむね順調に進展している.来年度は,帯電微粒子の輸送制御を行い,ナノ粒子膜堆積を実証する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
プラズマ中孤立波励起による微粒子の輸送制御を実現するために,平成25年度は以下の3項目について研究を行う. 1) 孤立波揺動電場による帯電微粒子輸送に関する実験:平成24年度に構築した微粒子プラズマ実験装置を用いて,微粒子プラズマ中に孤立波を励起し,帯電微粒子の挙動をCCDカメラで観測する.具体的には,プラズマパラメータ,孤立波励起数,微粒子粒径をパラメータとしてパルス的外部電界による微粒子輸送を実現する. 2) 反応性プラズマを用いたナノ粒子輸送とナノ粒子薄膜の堆積に関する実験:平成24年度に構築した反応性プラズマ生成装置を用いて,ナノ粒子を生成し,ナノ微粒子ブロックを電界を用いて基板に輸送し,ナノ粒子薄膜の堆積を実証する.負に帯電したナノ微粒子ブロックを基板に加速入射させるため,基板に正バイスを印加する等の工夫を行い,高速ナノ粒子膜堆積を実現する. 3) 微粒子挙動に関する計算機シミュレーション解析:生成24年度に構築した微粒子プラズマMDシミュレーションコードを用いて,外部電場による帯電微粒子輸送に関するシミュレーションを行う.具体的には,微粒子間静電気力,外部静電気力,イオン抗力,ガス摩擦力を考慮し,微粒子挙動の計算を行う.その知見を微粒子輸送実験にフィードバックする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
【直接経費80万円の使用計画】 微粒子プラズマ生成装置真空部品代として13万円,微粒子レーザー計測光学部品代として20万円,放電ガス代として5万円,微粒子MDシミュレーション用PC代として12万円を計上する.また,成果報告のための学会参加のための旅費を20万円,その他(学会参加費等)として10万円を計上する.
|