研究概要 |
本研究では、高エネルギー粒子の運動論的効果を取り入れた粒子加熱および乱流輸送特性を理論的に明らかにすることを目指している。近年、報告者等の研究で高エネルギー粒子により振動帯状流(GAM)が励起され、駆動されたGAMがランダウ減衰によりイオン加熱効果を持つことが明らかになった。GAMはプラズマの径方向へ伝播する特性を持つため、加熱効果を理解するためには伝播の特性を知る必要がある。本年度はGAMの径方向伝播特性の理論解析を行った。 GAMと乱流の共存状態を考え、乱流から受ける高次の非線形力まで取り込んだGAMの非線形分散関係を導出し、伝播特性を得た。GAMが受ける乱流からの非線形力はレイノルズ応力に注目した。得られた非線形分散関係から導出したGAMの群速度は、これまでの線形理論による値と比べ10~100倍程度大きくなりうる事が分かった。位相速度と群速度が近くなる事から、準線形的に評価される自己相関時間は格段に長くなる事が分かる。さらに実際の実験パラメタを用いて非線形効果の評価も行い、観測可能性も議論した。[M. Sasaki, et. al., Plasma Fusion Res. 8, 1403010 (2013)] 上記研究に加え、乱流揺動の統計的性質に関する研究も進めた。円柱プラズマの抵抗性ドリフト波乱流を模擬するコード(Numerical Linear Device, NLD)を用い、長時間の乱流飽和状態を得る事に成功した。得られた揺動場から評価した粒子束、運動量束の統計的性質を調べた。両者の相関を調べた所、粒子束の変動は0.4倍ドリフト波周期程度運動量束の変化より先に起きている事が分かった。これは実験観測と定量的に同様の結果である。[M. Sasaki, et. al., submitted to Plasma Fusion Res. (2012)]
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