研究課題/領域番号 |
24740373
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
沼田 龍介 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (30615787)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気リコネクション / ジャイロ運動論 / プラズマ加熱 / マイクロテアリング |
研究実績の概要 |
2014年度は、電子圧力勾配が存在しない場合/する場合の磁気リコネクションプロセスについて、ジャイロ運動論シミュレーションを行った。シミュレーションは、国際核融合エネルギー研究センター(IFERC-CSC)の大型計算機Heliosを用いて行った。 電子圧力勾配が存在しない場合の磁気リコネクションについては、解放された磁場のエネルギーがどの程度プラズマ加熱に分配されるかを調べている。弱衝突磁化プラズマにおいては、ランダウ減衰や有限ラーマ半径効果に起因する位相混合によって、効率的にプラズマ加熱が起こることが前年度までの研究によって示されているが、2014年度の研究によって、さらにプラズマ加熱が強く起こる場所を同定した。電子の加熱は、磁力線に沿う方向のランダウ減衰によって起こるため磁気セパラトリクス上で起こり、一方イオン加熱は、磁気リコネクションが起こるX点近傍で磁力線を横切って広がる。また、プラズマベータが高い場合は磁気リコネクションの結果として生じる電流シート構造が不安定となりプラズモイドが形成されるが、これに伴ってプラズマ加熱の効果が活性化されることが明らかになった。 一方、電子圧力勾配が存在する場合、マイクロテアリング不安定と呼ばれる不安定性が磁気リコネクションを駆動する。2014年度は、線形のジャイロ運動論シミュレーションによって、マイクロテアリング不安定性の分散関係を調べ、理論的な予測との比較を行った。マイクロテアリング不安定性は、衝突性の不安定性であることが理論的に知られているが、シミュレーションから、衝突周波数がドリフト周波数と同程度の時不安定となり、それ以外では安定となることが示された。理論予測と定性的に一致する結果が得られているものの、定量的には理論予測よりも強い駆動力がなければ不安定化されない結果となっており、不整合を解消した理論を構築する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、圧力勾配がないプラズマとあるプラズマの磁気リコネクションの線形・非線形特性の理解である。さらに、磁気リコネクションの基礎的特性を理解した上で、マイクロテアリング不安定性などによって駆動されるメゾスケールの乱流構造が、磁気リコネクションに及ぼす影響を解明することを目指している。 電子圧力勾配がない通常の磁気リコネクションの線形・非線形特性の理解については、2013、2014年度の研究によって、概ね達成できている。ここでは、磁気リコネクションを通して磁気エネルギーがプラズマの熱に変換される過程に着目し、位相混合によってプラズマが効率的に加熱されることを示した。 電子圧力勾配がある場合に生じるマイクロテアリング不安定性については、線形シミュレーションを行い、得られた分散関係と理論予測との比較を行った。マイクロテアリング不安定には衝突が重要な役割を果たし、無衝突では起こらないという、定性的に理論予測と一致する結果が得られている一方、定量的には不安定領域が理論と一致しないため、新たな理論の構築が課題である。並行してマイクロテアリングによって駆動される乱流の非線形シミュレーションも行っており、電子のエネルギー輸送を増加させる微視的乱流の駆動には電子の温度勾配が重要な役割を果たしているという知見が得られている。 これらの結果を踏まえて、当初の計画通り、次のステップであるメゾスケール構造の効果の検証に研究を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度までの成果によって、圧力勾配がないプラズマとあるプラズマの磁気リコネクションの基礎的特性の理解は概ね達成できている。ただし、ジャイロ運動論シミュレーションと整合するマイクロテアリング不安定性の精細な理論の構築は課題として残っており、今後も継続的に研究を進める。 今後は、メゾスケールの乱流構造が磁気リコネクションに及ぼす影響を解明するためのシミュレーションを行う。第1に外力によって乱流を駆動し、位相混合によるプラズマ加熱を解析する。第2に圧力勾配によってマイクロテアリング不安定性による乱流を駆動し、自己組織的に形成される乱流と外的に生成される乱流の効果を比較する。 2014年度までに得られている成果と、本研究課題の総括および今後の展望について議論するために、研究協力者を訪問するための旅費を計上する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での成果発表にかかった経費が見積り額より少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の報告のための旅費、データ整理等のための賃金などに使用する予定である。
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