本年度は、電子圧力勾配が存在する場合の磁気リコネクションプロセスであるマイクロテアリング不安定性についての成果をまとめた。共同研究者とともに、任意の衝突周波数に対する電子の電気伝導度を正しく取り扱える理論モデルを構築し、同モデルの漸近解析とジャイロ運動論シミュレーションとの比較を行った。この解析結果から、マイクロテアリング不安定性は衝突性の不安定性であり無衝突の極限では安定であること、無衝突の極限では静電的な電子温度勾配駆動型の不安定性がリコネクションを駆動することを明らかにした。これまで、圧力勾配を含まない場合における磁気リコネクションを引き起こす不安定性(テアリングモード)について、衝突を正しく取り扱える運動論モデルを構築していたが、さらに圧力勾配を含む理論に拡張することができた。
本研究課題では、微視的な効果を正しく取り扱える包括的な磁気リコネクション現象の多階層シミュレーションを行い、乱流などのメゾスケール構造の効果を解明することを目的として研究を行った。4年間の研究期間に、微視的な効果である位相混合が強いプラズマの加熱を引き起こすことを明らかにするとともに、上記のように圧力勾配を含むようにモデルの拡張を行った。ここで開発された理論モデルは、高ベータ核融合プラズマにおける電子の輸送、磁気リコネクションの室内実験におけるプラズマの加熱(特にイオン加熱)機構の解明や、太陽コロナの異常加熱など、高ベータプラズマにおける未解明の電磁的現象への適用が期待できる。
しかし、当初目指した乱流などのメゾスケール構造の効果の包括的な取り扱いまでは至らなかった。当初目的の達成のため、外部駆動乱流などの効果を取り入れたモデルの拡張を進めており、さらなる研究の推進が必要である。
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