研究課題/領域番号 |
24740375
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 淳 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70413987)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ物理 / 電磁流体力学 / プラズマ不安定性 |
研究概要 |
核融合プラズマや宇宙プラズマに共通して現れる、Rayleigh-Taylor (RT)型の不安定性とKelvin-Helmholtz(KH)型の巨視的不安定性の短波長モードに対して顕著となる微小スケールの効果を、拡張磁気流体モデルを用いた線形固有モード解析により数値的に明らかにした。重力下で軽い流体が重い流体を支えている場合に起こるRT型の不安定性と強い流れのシアーが引き起こすKH型の線形不安定性に対する、ホール電流などの二流体効果やジャイロ粘性などの有限ラーマー半径効果を含んだ拡張磁気流体モデルを用いて、従来の理論解析で用いられている低ベータ・非圧縮・短波長極限・不連続な平衡プロファイル等の簡単化を行わずに線形固有モード解析を数値的に行い、より一般的な磁化プラズマの条件におけるこれらの微小スケール効果による不安定性の成長率の波数依存性の変化などを調べた。 まず、二流体および有限ラーマー半径効果を含んだ磁化プラズマに対する拡張磁気流体方程式系から、一般的な一次元スラブ平衡に対する線形固有モード方程式を導出した。次に、連立二階常微分方程式の固有値問題を解くための数値計算コードを開発した。このコードは、常微分方程式を差分化して得られる行列方程式の行列式によって与えられる分散関係式を解くことによって固有値を求めている。このコードを用いて上記の二つの不安定性に対する固有モード解析を行った。不安定性の成長率の波数依存性は、非線形拡張磁気流体シミュレーションの線形段階での振る舞いと比較して定性的に等しいことを確認ながら進め、それぞれの不安定性に対して、二流体効果、有限ラーマー半径効果およびその両方の効果による従来の理論には見られない短波長モードの安定化および不安定化の効果を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡張磁気流体モデルを用いた線形固有モード解析により、核融合プラズマや宇宙プラズマに共通して現れる、Rayleigh-Taylor (RT)型の不安定性とKelvin-Helmholtz(KH)型の巨視的不安定性の短波長モードに対する一般的な磁化プラズマの条件における二流体効果や有限ラーマー半径効果を詳細に調べるために、線形固有モード方程式の導出、連立二階常微分方程式の固有値問題を解くための数値計算コードの開発、そして数値解析により、従来の簡単化された系に対する理論解析では表せない短波長モードのこれらの効果による安定化及び不安定化が明らかになっており、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究計画の未完了の部分を、国内および海外の研究協力者と共同で、着実に推進していく。 次年度は主に、低衝突の磁化プラズマに対する拡張磁気流体方程式を用いて、テアリング不安定性に対する線形安定性解析を行う。テアリング不安定性は、非一様な磁場において抵抗によって起こる不安定性で、磁気再結合(リコネクション)を引き起こす、核融合及び宇宙プラズマに共通して重要な巨視的不安定性である。高ベータプラズマでは、ドリフトテアリングモードと呼ばれる反磁性ドリフトを伴う不安定性となる。このドリフトテアリングモードに対する解析は、これまで反磁性ドリフトの効果を比較的簡単に導入することができる高衝突のプラズマに対するBraginskiiの拡張磁気流体モデルが用いられてきたが、これに熱流束の効果が加わることで線形安定性がどのように変化するかを線形固有モード解析によって明らかにする。この研究では海外の研究協力者と共同で定式化を進め、解析に必要な方程式を導出する。次に、得られた方程式を用いて数値解析によりドリフトテアリングモードに対する熱流束の効果を明らかにする。数値解析には前年度に開発したコードを用い、ドリフトテアリング不安定性の線形安定性に対する熱流束の効果を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度の後半に研究が進展したため、10月の米国での学会発表を翌年度の4月の米国での学会発表に変更し、既に実施した。また、年度内3月の国内学会発表も既に実施した。
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