研究課題
1. トレオニン合成酵素(TS)について、反応機構の理論的解明を試みた。反応機構に関してQM/MM法を、基質結合に関してMD法を用いた。反応機構解析を進めていくと、本系は極めて難しく、膨大な計算が必要である事が明らかになってきた。特に、水素に関する情報(プロトン化状態、水素結合方向、結晶水の有無)が無い為、計算的に解決する事が不可欠だった。そのため、国内のスーパーコンピューター(T2K-Tsukuba, HA-PACS, 物性研、FX10)のリソースを用いて、大規模数値計算を行い、プロトンにまつわる問題を網羅的に検証し、TSの反応機構の解明を図った。QM/MM法により6つの状態と7つの反応経路について検証した。本計算に約1年間かかった。網羅的探索の結果、初めて、TSの反応機構(リン酸脱離以降)を明らかにした。計算から求めた反応自由エネルギーは実験で得られたものと3kcal以内で一致し、中間体のUVスペクトルも高精度に再現された。これまで、TSのような極めて複雑な反応機構は原子レベルで明らかにされていなかったが、実験と理論研究を共に活用する事で、反応機構の詳細を電子レベルで初めて明らかにした。現在、計算結果をまとめ、論文を作成している段階である。MD計算からはMM-PBSA法を用いて、100nsのトラジェクトリから自由エネルギーを評価し、補因子のpKaを求めることで、水素結合ネットワークとプロトン化状態の検討をおこなった。2. 亜硝酸還元酵素(NiR)について反応機構の解明を進め、X線結晶構造解析がなされている中間体の構造の再現と基底スピン状態の決定を行った。3. 酵素の反応機構の研究発表をしたところ、酵素を扱っている企業から共同連携依頼を頂き、平成25年度から学術指導契約の形で連携していく事になった。
1: 当初の計画以上に進展している
TSに関し、計算に時間がかかってしまったが、大変画期的結果が得られている。現在、順調に論文作成段階まで進展できている。NiRに関しては重要な状態の計算が終わっており、順調に進行できている。
1. TS論文の投稿。2. TSの基質選択制についての解明。3. TSのリン酸脱離前までの反応機構の解明。4. NiRの反応機構をまとめる。
該当なし
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International Journal of Quantum Chemistry
巻: 113 ページ: 342-347
10.1002/qua.24074
巻: 113 ページ: 525-541
10.1002/qua.24117
巻: 113 ページ: 453-473
10.1002/qua.24280