研究概要 |
本研究ではレーザーアシステッド電子散乱(LAES)過程を用いて、強レーザー場中の原子や分子の光ドレスト状態の性質を直接プローブすることを目的としている。平成25年度は、「1.高強度レーザー場による高次LAES遷移の観測」、および、「2.LAES小角散乱信号測定によるドレスト状態観測」を行った。 1.高強度レーザー場による高次LAES遷移の観測 高強度フェムト秒近赤外レーザー場におけるXe試料による電子散乱実験を行い、散乱電子のエネルギー分布と角度分布を測定した。その結果、近赤外域のレーザー場によって誘起される高次の多光子遷移を伴うレーザーアシステッド電子散乱信号の観測に初めて成功した。散乱電子のエネルギースペクトルには、通常の弾性散乱信号に加え、n光子分エネルギー増加した信号が現れ(n = +1, +2, +3, +4, +5, +6)、それらの強度は理論シミュレーションの結果と良い一致を示した。 2.LAES散乱によるドレスト状態観測 LAES小角散乱信号の観測をめざしてフェムト秒LAES観測装置を改良し、検出可能な散乱角度領域を2.3-12.0度から0.1-12.0度に拡大した。改良された装置を用いて、Xe原子を試料としたLAES散乱角度分布の測定を行った結果、散乱角度0.1-0.5度の領域に明らかなピーク構造を観測した。この観測結果は、光ドレスト状態形成の効果が散乱角度0~1度の領域にピーク構造として現れると予測された従来の理論的研究と良く一致しており、LAES過程に現れる光ドレスト状態の効果が初めて観測されたことを示している。
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