研究課題/領域番号 |
24750020
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
須磨 航介 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (10506728)
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キーワード | 分子分光 / ラジカル / ラジカル分子錯体 / HOOOラジカル / CRDS |
研究概要 |
本年度研究では①HOOOラジカルの分子軌道計算②Ar-CN(A)の分子間ポテンシャルの理論計算による研究を行った。③CRDS分光器の改良とこれを用いたH2O-CN錯体の探査②、③について概略を説明する。②では、Ar-CN錯体の第一電子励起状態(A)の分子間ポテンシャル(IPS)の計算を行った。A状態のAr-CN錯体のIPSとしてはAlexanderらがMRCI/AVTZによる結果を報告している。しかしHanらのCN-Arの蛍光ディップスペクトルを再現するにはAlexanderらのIPSを1.76倍も深くする必要があることが報告されている。本研究ではA”についてはCCSD(T)-F12b/AVQZ、差ポテンシャルについてはFull-valenceのMRCI/AVQZを用いてIPSの計算を行った。Hanらの実験を再現する実効的なIPSに比べるとDeは10cm-1程度小さいものの、よく似た形状のIPSが得られた。また、分子間結合距離は先述のIPSにくらべ各角度で一様に0.17Å程度も短くなり、将来高分解能の実験によりさらなる検証が行われることが望まれる。③では、昨年に引き続き簡単なラジカルのCRDスペクトルをモニターし、装置の改良・実験条件の最適化を行った。ラジカルの生成効率については大きな改善はみられなかった。分光器ノイズについては錯体検出に必要と見積もった最終目標である1ppm/passは達成できなかったものの光学系の改良等により幾分の改善があった。また、H2Oの存在下では放電のノイズがかなり抑えられ、2ppm/pass程度まで減少することができた。対象種を水錯体に限れば成果を上げることが期待される。そこで本年度はH2O-CN錯体の探査を行った。CNラジカルのA-X遷移近辺を650cm-1に渡ってスキャンした。CNラジカルでは説明が付かないブロードなバンドが観測された。現在は観測されたバンドがH2O-CN錯体によるものか確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラジカル錯体の探査、理論計算に関する研究は概ね順調に進行しているが、装置等の故障があり放電後混合ノズルの作成が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
観測されたH2O-CN錯体と考えられるバンドについてさらに精査する。放電後混合ノズルの作成を完了する。H2O-CN錯体以外の水を含むラジカル錯体の探査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度にAr-CN錯体のCDRS分光を行い、実験結果と分子軌道計算の結果を組み合わせ、分子間ポテンシャルを決定し、国際分光シンポジウムで成果を報告する予定であったが、実験の過程でより重要性の高い分子種であるH2O-CN錯体と考えられる遷移を観測したため、急遽計画を変更し追加実験及びそのスペクトルの解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。 H2O-CN錯体のものと考えられるスペクトルの解析とシンポジウムでの発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てたい。
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