研究課題/領域番号 |
24750026
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
飯島 隆広 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (20402761)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核磁気共鳴 / 重水素 / 常磁性 |
研究概要 |
本研究は、固体NMRの中でも試料中の分子の静的構造だけでなく、秒~ナノ秒程度のタイムスケールの分子運動を調べられる重水素核(2H)の固体NMRに対し、新しい測定法を開発するものである。特に、これまで研究例が僅かであった常磁性化合物の重水素NMRを対象にし、そのNMRのスペクトル解析を格段に容易にする測定手法の開発を目指している。 本年度は、静止試料で二次元NMRにより常磁性シフトを除去する手法の開発を行った。重水素核のNMRの特徴として、核四極相互作用が大きいために磁化の減衰が速い点やラジオ波パルスによる制御が困難という点がある。そこでパルスシーケンスの設計指針を次のようにした。I.スピンエコーで信号を観測する。II.パルスの数は可能な限り少なくする。III.各パルスは高強度にする。具体的なシーケンスは、研究計画調書に記載した通りのものであった。 このシーケンスを適用するため、高強度のラジオ波パルスを照射可能なNMRプローブを作成した。さらに、分子ダイナミクス等が既知である常磁性化合物をモデル化合物として合成し、重水素化を行った。9.4 Tの超伝導磁石を用い、このモデル化合物に対し、上記のNMR測定を行った。その結果、二次元NMRにおける間接軸で所望のスペクトルを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書では、「シーケンスの作成」「プローブの作成」「NMR測定と手法の評価」、及び「スペクトルの温度依存性の測定と分子ダイナミクスの評価」を実施すると記載した。このうち、「NMR測定と手法の評価」までは計画通りに進めることができたが、「温度依存性の測定と分子ダイナミクスの評価」を行うことができなかった。 温度依存性の測定に向け、必要となる機材の選定と購入準備を進めていたが、ちょうどその時期に研究実施者が所属研究機関を移ることが決まり、今後の研究環境が大きく変わることになった。そのため、予定していた機材の購入を見送ることにした。これが研究の進捗がやや遅れた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度4月1日に研究実施者が所属研究機関を移ることになる。これに伴い、研究環境が大きく変わる。特に、赴任後の部局には実験室がなく、学内で目的とするNMR測定を行うことができない。そこで、本研究課題を遂行するにあたり、学外の共同利用施設のNMR装置を利用することにする。 共同利用施設のNMR装置の整備状況や利用状況を踏まえて、所望の測定ができるよう、手続きを進めたい。共同利用施設は複数あるため、測定目的に応じて施設を選定する。例えば、温度可変のNMR測定を行うには、窒素ガス供給システムが整備済みである物質・材料研究機構のNMR装置を利用したい。そのシステムを用い、本研究で開発するシーケンスが実行できるようプローブの改造等を行ったうえで、NMR測定を行う。 計算機に関しては現有のものを引き続き利用できるため、「分子ダイナミクスの評価」といったデータ解析に関する部分は従来通りに研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度からは学外の共同利用施設を利用してNMR測定を行う必要がある。このため、出張旅費や装置利用費に十分な研究費を充てる。共同利用施設のNMRシステムで本研究課題の開発を行うために、プローブ等の改造が必要になると思われるため、コンデンサ等の材料の購入を計画している。計算機については、数値計算のソフトウェアをアップデートするために研究費を用いる予定である。また、研究室を移るため、新しい研究室でプローブの製作を行う際に必要となる工具等の購入も行う。
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