研究課題/領域番号 |
24750026
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
飯島 隆広 山形大学, 基盤教育院, 准教授 (20402761)
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キーワード | 核磁気共鳴 / 重水素 / 常磁性 |
研究概要 |
本研究は、固体NMRの中でも試料中の分子の静的構造だけでなく、秒~ナノ秒程度のタイムスケールの分子運動を調べられる重水素核(2H)の固体NMRに対し、新しい測定法を開発するものである。特に、これまで研究例が僅かであった常磁性化合物の重水素NMRを対象にし、そのNMRのスペクトル解析を格段に容易にする測定手法の開発を目指している。 本年度は、前年度に引き続き、静止試料で二次元NMRにより常磁性シフトを除去する手法の開発を行った。パルスシーケンス及びNMRプローブは基本的に昨年度に開発済みである。しかしながら、本年度開始時に所属が変更になり、それに伴い使用する装置も変わった。これに対応するため、新たにNMRプローブの作成とパルスシーケンスの移植を行った。新しい測定環境において、常磁性のモデル重水素化合物であるCoSiF6 6H2Oを対象として手法の最適化を行うとともに、種々のパルスパラメータの二次元スペクトルへの影響を検証した。 さらに、分子運動の検出を行うため、150-390 Kで二次元スペクトルの温度依存性を測定した。これは、重水素核のNMRの最重要目的の一つである分子運動の検出を本手法が行えるかを確認するためである。得られたスペクトルをシミュレーションするため、解析プログラムを新規に作成し、NMRスペクトルを数値計算した。その結果、運動に関するパラメータを簡便な方法で得られることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究内容自体は順調に進んでおり、特に二次元NMR法についてはほぼ研究計画調書で記載した通りの内容で開発を行うことが出来、現在論文にまとめている最中である。しかしながら、当初の予定ではもう少し早くこれを終えるはずであった。やや遅れた理由は、2年目開始時に研究代表者が所属機関を異動したことに伴い、実験環境の再構築が必要になったことである。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書に記載した内容のうち、二次元NMRの手法は開発をおよそ終えることができたので、今後は一次元NMR法に注力していきたい。一次元NMR法は、研究計画調書でも予想したように技術的な難易度が高く、補助頂いている予算内でどの程度までうまくいくかが問題である。やるべきことや、うまくいかなかった場合の対応策は調書に記載してあるので、やれることを一つずつ試していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
残金は4,380円であり、請求額を概ね消費したことになる。残金が発生した理由は、その額を0円にする処理を行わなかったためである。 本年度は技術的難易度の高い一次元NMRの実験を行う。プローブの改造費と装置利用費を中心に補助金を充てていきたい。
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