研究課題
本年度は前年度に見いだされた15族元素(リン)を含むアザポルフィリン錯体の興味深い物性に関して更なる探求を行った。ある種のアザポルフィリンリン錯体について、酸塩基応答により吸収特性が大きく変化する現象について、各種分光測定・理論化学計算を用いた解析を行った。結果特に塩基の存在により中心リンの電子状態が大きく変わることが吸収特性の変化と対応していることを見いだした。また、分光特性のみならず、構造特性にも着目した研究を行った。ある種の嵩高い置換基を有するフタロシアニンは固体状態によって大きく歪むことが知られている。このような化合物に対しリン錯化を検討し、合成・単離および結晶構造の解析に成功した。結果、リン錯化の前後で歪み構造が大きく変化していることが分かり、広い共役系を持つ有機分子の構造がわずか一原子の効果により変化することを示した。以上の内容、また研究期間全体を通して、環状・鎖状オリゴヘテロールの分子デザインにおいて、16族元素または15族元素の活用が非常に有効であることを示した。16族元素を用いた分子については蛍光材料として、15族元素を用いた分子については可視-近赤外光材料としての活用が期待できる。また本研究では、分子の合成法の開発に並行して理論計算を用いた分子群の評価も並行して行った。結果化合物中の元素・構造が与える効果をより明確にすることができ、新規有機材料開発の指針となりうることが期待できる。
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