研究課題
本研究では長い共有結合を有する化合物の創製とその物性調査を目的としている。昨年度までにメチルアクリダンを組み込んだピラセン誘導体において結晶および粉末状態でサーモクロミズムが発現することを確かめている。本年度は当化合物を物性調査が可能になるよう、スケールアップ合成を検討した。前駆体のジカチオンを還元することで目的化合物を発生させたのち種々の精製を試みたが収率の向上は出来なかった。今後嫌気低温条件下での再結晶を検討する予定である。これまでに立体障害を増大させた化合物が結合が開裂したとみなせる長いC…C結合距離を有することをDFT計算により明らかにしている。本年度はこれまでに検討してきた長いC-C結合の分子足場を改良することで結合が伸長しないか検討した。これまでに検討してきたテトラアリールピラセンの分子足場であるピラセンの一方のC-C単結合を二重結合もしくはベンゾ縮環し摂動を与えることで分子足場の反対側にある長いC-C結合がさらに伸長しないか検証を試みたが、有意な結合の伸長は認められなかった。一方で分子足場の5員環を4員環にすることでより長いC-C結合長が見積もられることを明らかにした。長いC-C単結合の結合伸長の由来は単結合周りの立体障害であることが明らかにされている。そのことを実証し更なる特異な結合種の探索を目指し、C=C結合の伸長に挑戦した。C=C結合周りの置換基がより平面にかつ近接位に強制でき、固い分子足場としてアセナフチレン-1,2-ジイル骨格を選択し置換基として剛直なπ骨格であるアクリジンを組み込んだ化合物を合成した。X線構造解析の結果、合成した化合物では標準結合長より5%長い1.379Åの結合を有することを明らかにした。立体障害及び電子状態が異なる類似化合物との詳細な比較によりこの結合伸長はアクリジン間での立体反発に帰属できることが確かめられた。今後該当化学種の結合強度や特性の調査を行う予定である。
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