研究課題
若手研究(B)
芳香族化合物のモデル研究において達成困難であった[4n]アヌレノ[4n’]アヌレン骨格を構築するべく、環拡張ポルフィリンに分子内共役架橋構造を導入することを検討した。それが可能と考えられる最小分子であるヘキサフィリンは、環拡張ポルフィリンの中でも平面構造を維持可能な最長の共役系を有するが、現時点では目的の骨格は得られていない。環拡張ポルフィリンのβ位修飾反応は難しく、位置選択的となるとさらに困難を極める。特異的な部分構造を持つN‐フューズドペンタフィリンを用いることで、温和な条件で単一の臭素化生成物を与え、X線結晶構造解析により、開環と閉環が複雑に連続して起きた新たなπ平面を形成して新たな共役架橋構造を見出した。この分子の酸化還元挙動やアヌレノアヌレンとしての性質は明らかになっていないが、分子内反応という新たな選択肢を示す結果である。臭素置換部分は非常に電子不足になっており、求核置換反応に極めて高活性だった。通常触媒を必要とするような直接アミノ化も行えた。系中の水分によると思われるケト型酸素化生成物も得られ、交差共役になっていることによる芳香族性の消失と非常に狭い内部キャビティ、続くホウ素錯体化により芳香族性が回復することがわかった。さらに、臭素化体にトリエチルアミンのようなフリーの腕を持つ三級アミンを作用させることで、アミンのアルキル基が求核攻撃をしたビニルアミン化体が得られることもわかった。マクロ環の中央内部からめくれ上がるような共役系の伸長が可能となり、三次元的なパイ電子系の拡張が期待できる。
3: やや遅れている
共同研究先とのプロジェクトへのエフォートを上げざるを得なくなり、本研究に割く時間が十分でなかった。また、当初進行すると考えていた反応がうまくいかず、合成ルートをかなり手前から改善する必要があった。一方で、別のプロジェクトからフィードバックされたアイデアが有用であるかを調べていた。
前身研究中で得られた中間体や副生成物は、それ自体が機能性分子として有用であり、かつそれらを利用した新規化合物の合成は今後様々な方向へ展開可能であるので、それをメインに進めつつも適宜フィードバックを行うことで相補的な進行を期待する。またある程度進めた時点で困難であることが分かった場合あるいはもっと興味深いことが発現した場合、大きな方向転換も躊躇しない。
購入を計画していた機器が高額であるとわかり、現在の消費状況では一括購入できない。他の助成金にアプライし、獲得できたら順次足して購入を予定している。その他は消耗品を中心に申請時の計画通りとなる。
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Chemistry - A European Journal
巻: 18 ページ: 15838-15844
10.1002/chem.201200991