研究概要 |
本年度はまず,高分子カルセランド型Au, Au-Co, -Fe, -Niナノ粒子を用いるアルコールとアミンからの酸化的アミド化反応の基質一般性の拡大について検討を行った.その結果,チエニル基,アルキニル基,カルボキシル基を有する基質,様々な環状二級アミンを用いた場合にも高い収率で目的のアミドが得られた.また,上記の二元金属ナノ粒子触媒の電子顕微鏡による詳細な観測を行ったところ,いずれの場合も金と鉄族元素が別々のクラスターを同一担体中に形成しており,そのような触媒構造がアミド選択性に重要であることを見いだした. 一方,アルデヒドとアミンからの分子状酸素を酸化剤とする酸化的アミド合成の検討を行った.その結果,Auナノ粒子触媒を用いアルデヒドを定速添加することでアミドが良好な選択性で得られた.さらなる検討の結果,5-10 nmのやや大きいサイズの粒子を用いることで非常に高い選択性でアミドが得られた.これは金属ナノ粒子の粒子サイズにより反応の選択性が制御される興味深い反応系である. さらに,一級アミドとアルコールのhydrogen autotransfer機構による二級アミド合成の検討を行なった.本反応は,出発物質と生成物の酸化還元状態が一致し,酸化剤や還元剤の添加が必要でないことから,グリーンケミストリーの概念に適合した反応系である.一方,アミドの低い求核性から,アミドを用いるhydrogen autotransferは困難で今まで実現が難しく,数例の報告があるのみであった.高分子カルセランド型Au-Pd合金ナノ粒子触媒を用いたところ,良好な収率で二級アミドが合成できた.さらに反応効率の向上をめざし,種々添加剤を検討したところLewis酸としてBa(OTf)2を用いることで定量的に目的の二級アミドが合成できた.本触媒系は金属ナノ粒子とLewis酸の共同効果による興味深い反応系である.
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